本研究は、バナナを基幹作物とする東アフリカの集約的農業地域において、アグロフォレストリー(樹木と他の作物が混植される集約的な土地利用形態)の発達と住民の知識がいかなる関係にあるのかを、苗木の配布・モニタリング・聞き取り調査をとおして明らかにすることを目的としている。 最終年度である平成28年度は、ウガンダの農村部で短期の補足調査をおこなった。具体的には、農家世帯へ配布していた樹木の生育状況を把握するとともに、樹木にかかわる知識について農家と意見を交わした。また、前年度までに得られたデータの分析を進め、ウガンダの首都カンパラで開催された国際民族生物学会にて、ウガンダ中部におけるホームガーデンと在来知の特徴に関する研究発表をおこなった。 研究期間全体として、以下の点が明らかになった。 (1) ウガンダの中部と西部は、バナナを基幹作物とする点では共通しているものの、アグロフォレストリーにかかわる住民の知識が異なり、中部のほうがバナナと樹木の混植に対する志向が強いことが分かった。 (2)少数の樹種に関しては、バナナとの生育上の相性にかかわる情報が広く共有されていた。しかし、実際に植えられている樹木種の構成は世帯間で大きく異なっていた。その要因として、土壌の肥沃度、慣習、利用法にかかわる知識、自給/販売への志向性の違いが推定された。 (3)苗木の配布と追跡調査によって、ウガンダ中部においてバナナとの混植に適する樹木種を明らかにした。また、農家の主体的関与を考慮する必要があるものの、樹木栽植への関心と知識を高める点において、苗木の配布は農村への波及効果が高いことが分かった。さらに、苗木は施設や金銭等よりも不平等感を生み出す問題が少なく、住民間や住民と研究者の間での意見交換を活発にさせるための一種のツールにもなりうることが分かった。
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