研究課題/領域番号 |
24710299
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
内藤 大輔 総合地球環境学研究所, 研究推進戦略センター, 特任助教 (30616016)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 森林認証制度 / 森林管理協議会 / 信用組合 / 保護価値の高い森林 / 認証材 / 地域住民 |
研究概要 |
本年度はインドネシアにおける森林認証制度のフィールド調査をおこなった。調査村周辺の森林は、国際的な制度である森林管理協議会(FSC)による認証を受けていた。認証制度の導入による影響に注目して、それらが実際にどのように機能しているかの調査を行った。調査村では、まずキーインフォーマントに集まってもらい、ワークショップを開催したのちに、ランダムに15世帯を抽出し、世帯主への詳細な聞き取り調査を行った。 2006年に林業省職員OBによって設立されたD社によって、森林認証取得への取り組みを2008年から始め、調査村周辺の森林で、2012年に認証を取得されていた。認証取得に際してはTFTというファンド兼バイヤーグループから全面的に出資を受けていた。D社は持続的な森林管理の導入に際して、胸高直径45cm以上の材を伐採する規定を設けていた。D社は信用組合を作り、45cmに達していない材を切らないよう、住民には融資し、より成長した材の伐採時に返却させるという制度を導入している。この制度がうまく利用されるようになれば、チークの持続的な利用にもつながり、かつ住民の収益もあがるものとなる。 さらにD社は認証取得地域における保護価値の高い森林の保全が求められており、同地域の生態調査を行い、生物多様性の高いエリアを明らかにし、絶滅危惧種などのリストを作成し、モニタリングのシステムを導入していた。水源林の保全や住民にとって重要な文化的な場所の保護も同時に行っていた。 認証材は通常の材に比べて3割増しの価格で売れるということだが、2012年は需要が少なく、材のほとんどは地元の市場に流れていた。そのためFSC取得の努力が報われないという声も聞かれた。村人の収入増加のオプションとして期待できるものの、安定的な需要がないという問題に直面していた。まだまだ始まったばかりであり、今後の継続調査が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドネシアにおいて森林認証制度が導入されている調査地でのフィールド調査を行うことができたことは、マレーシアとの比較に際しとても重要である。また住民を対象にしたワークショップを開催できたことも、住民の意向を明らかにする上で意義のあるものであった。またアメリカでの学会での発表を行い、今後の参考になるフィードバックを受けることができた。また編著『ボルネオの<里>の環境学』を出版し、そのなかで、マレーシアでの調査成果をまとめ、1章を執筆した。これらの成果から、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、インドネシアでの調査地における継続調査を進めていくとともに、マレーシアでの比較調査も行う。また審査機関についての調査も随時行っていきたい。認証基準の改訂プロセスが進んでおり、その実施状況についてもフォローしていきたいと考えている。 またこれまでの成果を論文としてまとめてきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
インドネシアでの認証林における継続調査をおこなう。フィールドワークを行い、村人への認証制度の影響についての聞き取りをおこなう。調査世帯数をもう少し増やすとともに、隣接する非認証林との比較調査もおこなっていきたい。また認証制度に関する文献資料の収集、データベースの化を引き続き行っていく。国内外で開催される学会への参加や発表を随時おこなっていく。
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