本研究は、「熱帯アジアにおける市場誘導型自然資源管理に関する比較研究」と題し、「市場メカニズム」に基づく自然資源管理の一つである森林認証制度の導入が、熱帯地域では地域住民の慣習権を制限するのでは、という問いの検証を目的として、平成24~26年にかけて実施した。 森林認証制度は本来、森林伐採による地域住民へ影響を軽減することがその目的の一つとされている。しかし森林認証制度の導入で、森林法などの既存法の執行が強化され、逆に地域住民の生業が制限されうることが指摘されている。そのため、熱帯地域における森林認証制度の導入の地域社会への影響を検証するため、社会面に関する厳しい基準を持っている森林管理評議会(FSC)の認証林において、審査機関による森林認証の監査システムに関する調査と、主要な熱帯材生産国であるマレーシア、インドネシアにおける認証林での地域住民への影響に関する比較調査をおこなった。 認証対象地域に暮らす住民に対し、慣習権、森林へのアクセス、利益分配について調査を行った結果、マレーシア認証林の周辺住民が認証取得によって得ている便益に比べて、インドネシア認証林の周辺住民の方が、相対的に得ている便益が多いことが明らかになった。その要因としては、認証に関わる利害関係者の多さ、もともとの政府による地域住民に対する社会福祉に関する規制、企業の地域住民に対する責任の違いなどが考えられる。これらについては今後複数の認証事例を比較検討することで明らかにしていきたい。
|