研究課題/領域番号 |
24710300
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
佐藤 千鶴子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 海外研究員 (40425012)
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キーワード | 南アフリカ / ワイン産業 / 農場労働者 / 黒人の経済力強化 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
本研究は、南アフリカの代表的な農産物加工産業であるワイン産業と砂糖産業を事例に、民主化後の南アフリカにおいて農産物加工産業に黒人生産者がどの程度、どのような形態で参入しているのかを明らかにすることを目的としている。平成25年度には、南アフリカにおけるワイン産業の中心地である西ケープ州において2012年11月~2013年1月に発生した農場労働者によるストライキの背景と影響について分析を行うとともに、クワズールー・ナタール州を主な産地とする砂糖産業の調査に着手した。 南アフリカでは、賃上げを求める労働者が団体行動の手段としてストライキに訴えることは決して珍しいことではない。だが、労働組合による組織化率が5~6%程度にすぎない農場労働者がこのような団体行動を起こすことは稀である。しかもこのストライキは、ぶどうの収穫期という労働力が最も必要な時期に起こった。この「歴史的」なストライキを収束させるため、政府は農場労働者に対する法定最低賃金の見直しを約束し、2013年3月1日には農場労働者の最低賃金が日給105ランドに改定された。農場労働者が要求していた日給150ランドには及ばなかったものの、それまでの最低賃金を50%以上も上回る大幅な上昇改定であった。ストライキ収束後には、農業部門の長期的な安定と発展を模索する政府・業界団体・NGO主導の政策対話が複数、開始された。それゆえ、同ストライキは政府が進めてきた黒人の経済力強化(BEE)政策の農業部門における成果が依然として限定的なものにとどまっていることを浮き彫りにしたが、それと同時に農場労働者の賃金や待遇をめぐる問題を重要な政策課題に押し上げることに成功したといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
南アフリカ政府による黒人の経済力強化(BEE)政策、土地改革政策、ワイン産業における黒人経営ワイナリーについての調査は順調に進展している。また、平成24年11月~25年1月にかけてワイン産業の中心地である西ケープ州で発生した農場労働者によるストライキの背景とその影響、ワイン産業界による農場労働者問題への取り組みについての調査や論文の執筆も順調に進んでいる。平成25年度には、クワズールー・ナタール州における砂糖産業の研究に着手することもできた。 他方、南アフリカ産ワインの最大の輸出先であるヨーロッパ市場の調査や、モザンビークなどの南部アフリカ諸国への南アフリカ砂糖資本の進出状況についての調査が実施できていないため、これらについては平成26年度の課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、南アフリカ、クワズールー・ナタール州での砂糖産業への黒人生産者の参入状況と課題に関する現地調査、モザンビークなど南部アフリカ諸国への南アフリカ砂糖資本の進出状況についての調査、南アフリカ産ワインの最大の輸出先であるヨーロッパ市場の動向に関する調査を実施した上で、3年間の研究の成果をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度と25年度にそれぞれ予定していたヨーロッパでのワイン市場調査とモザンビークでの南アフリカ砂糖資本の調査が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。 平成26年度は、南アフリカ、クワズールー・ナタール州、モザンビーク、ヨーロッパそれぞれにおける現地調査の実施、現地調査における調査補助員の雇用、南部アフリカ関係図書および資料の購入、英文での成果執筆の際の校閲などに研究費を使用する。
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