本研究では、南アフリカの代表的な農産物加工産業であるワイン産業と砂糖産業への黒人生産者の参入の程度と形態について考察した。政府が強い規制権限を持つ鉱業や漁業と比べると、農業への黒人の参入は限定的だが、いくつかの特徴的な参入形態があることがわかった。ワイン産業では(1)農場労働者と合弁事業を行う共同出資スキームと(2)ワイン銘柄ビジネスであり、後者はぶどう農場を取得しない形での参入という点に特色がある。他方、砂糖産業では土地改革を通じた黒人によるサトウキビ農場の取得が進んでいるものの、サトウキビの継続的な出荷が困難であるなど、農場経営面で課題があることが明らかになった。
|