研究課題/領域番号 |
24710306
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長崎外国語大学 |
研究代表者 |
佐々木 正徳 長崎外国語大学, 外国語学部, 講師 (40403977)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ジェンダー / ミリタリズム / 男性性 / 韓国 / 兵役 / 公益勤務 / 周縁 |
研究概要 |
平成24年度は、先行研究の収集と予備調査、一回目の本調査を実施することができた。 成果としては以下の二点が指摘できる。 一点目は、先行研究の分析より明らかになったことであるが、本研究に関連する専門用語の定義づけがいまだ確立されていないという点である。特にミリタリズムの場合、社会学の領域では軍国主義として使用される場合と軍事主義として使用される場合が混同しており、かつそれらが必ずしも明確に異なる概念として区分されていない。また、文化人類学の領域では「戦争」や「紛争」は大きなキーワードとして用いられているが、それらに不可分なはずである「ミリタリズム」について詳述している例は稀である。更に、ジェンダー研究の領域ではミリタリズムについて触れている先行研究は散見されるものの、本研究のキーワードである「男性の周縁性と権力概念」を含めた研究は未だ見いだせない。以上のことから、本研究の意義が再確認された。 二点目は、予備調査と一度目の本調査の実施できた点である。予備調査の段階でゲートキーパーと打ち合わせを綿密に行っておいたおかげで、本調査ではインフォーマントの手厚い協力を受けることができ、多くのインフォーマントから再調査の承諾も受けることができた。調査内容の分析は途上であるが、一点のみ、今後の研究の展開を示す興味深い結果を記す。 それは、本研究の調査対象者、すなわち韓国の兵役を「公益勤務要員」として果たす男性は、当初想定していた「周縁」もしくは権力的に下層に位置しているとは必ずしも言えず、「傍流でありながらも社会的成功が可能な対象」として存在しているらしいということである。例えば前科者にとっては公益を経験することが社会復帰を可能にする手段ともなっており、公益の位置づけは非常に輻輳していることが想起されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れているとした理由は以下の3点である。 1.調査は実施できたが、分析が進んでいない。また、日程不足のため、調査協力の同意は得たが、インタビュー未実施のインフォーマントが数名いる。 2.分析が進んでいないため、現時点で学会発表の目途が経っていない。 3.分析が進んでいないため、論文が完成していない。 昨年度の経験から、授業期間中にめざましい研究の進捗は望めないが、時間を見つけて鋭意進行させていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.7月までに前年度の調査結果をまとめ、8月末または9月と、3月に追加調査を行う予定である。 2.先行研究のまとめを勤務校発行の論叢に掲載する予定である。 3.下半期に最低一つの学会で発表を行う予定である(九州教育学会の可能性が高い)。 4.3月末までに、調査結果に関する論文を一本執筆する予定である(投稿誌未定)。 5.次年度、日本文化人類学会、および日本ジェンダー学会での発表に向けて、計画的に準備をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.インタビューデータの書きおこし(韓国語)については、ネイティブを雇用し、間違いのないように行う。(人件費としての使用) 2.インタビュー未実施のインフォーマントへの調査実施、新たなインフォーマントへの聞き取り、再調査など必要に応じて行う。(旅費としての使用) 3.引き続き最新の研究動向に注目し、資料収集を続ける。(物品費としての使用) 4.本務との兼ね合いにもよるが、関係学会には可能な限り積極的に参加する。(旅費としての使用)
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