本研究では、人格であること(personhood)についての私たちの理解を、他者や環境への依存性に着目することで更新することを目指した。現象学、フェミニズム、ケアの倫理、当事者研究などの議論を吟味した結果、とりわけ、人格であることにとっての構成的契機として、個々人の身体ニーズの反映としての住まい(ホーム)の経験が主題化され、その経験の意味が考察された。同時に、その研究によって、自己の同一性の意識などの特定の認知能力によって特徴付ける見方の問題点が明らかになり、その問題の倫理学的・政治哲学的含意の検討がなされた。成果は、日本語・英語・ドイツ語で執筆された諸論文において発表された。
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