研究課題/領域番号 |
24720004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
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キーワード | 功利主義 / カント / 倫理学 / 思想史 / 直観主義 / 義務論 |
研究概要 |
前年度に引き続き「英国の功利主義と直観主義の論争に対するカントの思想的影響の解明」について文献研究を進めた。具体的には、Kant and His Influence(2005)所収のThe Early Reception of Kant's Thought in England 1785-1805 (Giuseppe Micheli)やThe Cambridge Companion to Utilitarianism(2014)所収のKantian ethics and Utilitarianism (Jens Timmermann)などの文献の検討を通して、カントがベンタム以降の英国思想の流れにおいてどのような影響を与えたのかおよびカント倫理学と功利主義の関係について検討した。これについては現在論文を準備中である。 また、「義務論」の代表的理論家がカントになった経緯の解明については、文献データベースで検討を行なうとともに、カント研究の専門家等との意見交換を行なったが、まだ十分にその経緯が明らかになったとは言えず、次年度も引き続き検討を行なう予定である。 さらに、本年度は英国オックスフォード大学のウエヒロ応用倫理研究所を訪れ、功利主義と幸福の関係について研究会で報告を行ない、また規範倫理の観点から英国の終末期医療の現状について意見交換を行った。これについては以下の論文を公刊した。児玉聡・田中美穂、「英国における終末期医療の議論と課題」、『理想』、692号、52-65頁、2014年3月5日。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究機関の異動に伴う教育研究環境の変化により、当初想定していたほどの研究の進展が見られず、論文の執筆も遅れることとなった。ただし、英国での国際会議に参加するなどして、関連分野の研究者との交流を深めるなどして、次年度に研究を進める基盤は進みつつあると言える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き「英国の功利主義と直観主義の論争に対するカントの思想的影響の解明」及び「「義務論」の代表的理論家がカントになった経緯の解明についての研究」を進めるとともに、以下のことを行なう。 これまでの研究によって明らかになった功利主義と義務論の対比について、脳科学や認知心理学や行動経済学などの隣接領域においてどのように描かれているかについて文献研究を行い、この対比がもつ意義と問題点について検討する。 なお、生命倫理学および脳科学などにおける功利主義と義務論の対比に関する研究については、医療倫理学関連の研究会などで定期的に報告を行い、研究の内容や方向性について十分ディスカッションを行う予定である。また、本年度に関連国際学会や、国内の関連学会等でも報告を行い、当該領域を専門としている研究者からのコメントと助言を仰ぐ。 さらに、以上の研究を論文に取りまとめて国内外の学会誌に投稿するなどして、成果の発表を行う。
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