研究課題/領域番号 |
24720008
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
宮崎 裕助 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40509444)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 民主主義 / デモクラシー / デリダ / ミメーシス / 情動 |
研究概要 |
本研究の初年度である24年度の研究実績は、以下の視点から、「情動のデモクラシー」にとっての予備的な諸前提を解明したことにある。 第一に、政治的情動論の範型となるデリダの民主主義論に特有の論点を解明した。それによれば、9.11テロ以後の政治状況が一般に見て取られるように、「敵」のつくり出す暴力のイメージ、恐怖のイメージは、メディアというテクノロジーを介して切り取られ再構成されて、世界中に伝播し拡散する。それらのイメージは、人々に恐怖をかき立てる点で、テロリストたちが活用するものであると同時に、テロを根絶しようとしている者たちがメディアを介し、まさに恐怖という情動の出来事へと劇化し共有すべきものとしてつねに欲している当のものにほかならないのである。 第二に、民衆を結びつける情動的紐帯のひとつの根源として「ミメーシスの快」の役割を明らかにした。アリストテレス以来のミメーシスの概念は、たんなる再現的な模倣活動であるにとどまらず、自然の鷹揚さそのものの模倣であることにおいて、人間的自由の本質を述べるものであり、そこに人間を相互に結びつける知的快の起源をみとめることが可能である。このことがとりわけカント、ニーチェ、ベンヤミンにいたるミメーシスの系譜において示された。 また補足的な論点として、デリダと深い交流関係にあったアメリカの文芸批評家ポール・ド・マンの古典的著作を翻訳・紹介できたことにより、ルソー解釈をめぐる両者の鋭い緊張関係のなかで、ルソーの言語起源論の情動・情念・感動の位置づけを剔抉することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
後に示すように、図書での論考、学術雑誌の寄稿といったかたちで、成果を出すことができた。これは当初の計画で考えられていた水準をおおむね達成するものとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進展しており、予定通り、研究計画を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は、初年度に把握したデリダの友愛論とその民主主義概念を起点とし、その枠組みを「情動のデモクラシー」一般の視座へと練り上げ直すこと、そして、そのように再定義された「情動のデモクラシー」が現代民主主義論のなかでいかに位置づけられるのか、また新たな民主主義概念としてどのような寄与を果たしうるのか、について探究する。作業としては、友敵論を基軸とした「政治的情動」論の可能性をより広範な文脈で一般化するべく、加入学会(日本哲学会、美学会、表象文化論学会など)や19世紀学研究所等を通して他分野の研究者との交流を図り、本研究に更なる反省を加え、その批判的な展開を試みる。
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