研究課題/領域番号 |
24720011
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
近藤 和敬 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (90608572)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / フランス / クレルモン=フェラン大学 / ミシェル・ブリーヴセンター / カヴァイエス / エピステモロジー / レジスタンス / 哲学 |
研究概要 |
本年度は、まず(1)科学と社会、自然科学と人文科学の分離が、思想的にも制度的にも顕著になり始める20世紀初頭に、このような問題意識にたいして科学認識論がどのような解決を求めたのかを明らかにするという研究目的(1)のために、フランスでの現地資料調査を行った。その結果、国立文書館においてカヴァイエスの未発表の手稿を発見し、クレルモン=フェラン大学においてカヴァイエス研究者らと情報交換を行い、ミシェル・ブリーヴセンターでカヴァイエスの手稿の写真を撮影し、ボルドーのジャン・ムーランセンターでカヴァイエスの未公刊のタイプ原稿を発見し、パリのレジスタンス博物館で彼が関わっていたレジスタンス運動関連資料の撮影を行うことができた。現在、以上において集められた資料に加えて、収集したレジスタンス関連書籍およびカヴァイエスの宗教運動関連の論文、また彼の姉の手による伝記などの翻訳を行い、次年度に予定されるデータベースの作成およびインターネット上での公開に向けて、多面的な資料の整理を行っている。 つぎに、(2)科学と社会のあいだに模索されるべき新たな関係の構築という現在の問題関心にたいして、科学認識論研究の視座から独自の解決策を提案することという研究目的(2)のために、雑誌『現代思想』で連載していた論文をまとめた『数学的経験の哲学――エピステモロジーの冒険』を公刊し、そこにおいて一定の解答の提示を試みている。次年度は、この成果をもとに、哲学の内外において多岐にわたる分野の研究者と意見を交換し、ここで提示されている解答のポテンシャルを開示していくつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、1年目の調査は現地調査のための下調べ程度の予定であったが、実際には、予想以上の成果を上げることができ、当初計画していた以上の大量の資料を入手することができた。その結果、資料の整理に予定よりも時間がかかり、その分だけ1年目に予定していたデータベース化の作業が遅れることとなった。 しかし、結果的には、2年目の現地調査を1年目に繰り上げた形になるので、二年目は資料の整理に労力を費やすことができるのでその分の遅れを取り戻すことができる。 また、計画では最後に予定していた「科学認識論研究の視座から独自の解決策を提案すること」にかんして、想定よりもはやい1年目にそのひな形を公刊することができたため、2年目はこのひな形をもとにさまざまな研究者と議論をすることができるようになったので、この点に関しても、当初の予定よりも早いペースで、研究成果を発展させることができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究計画のうち、海外現地調査の予定を取りやめ、かわりにフランスから当該研究計画に関連する研究者を招聘して意見交換を行ったり、日本の研究者を集めて、初年度に公刊した著作について議論する研究会を開催するなどによって、「(2)科学と社会のあいだに模索されるべき新たな関係の構築という現在の問題関心にたいして、科学認識論研究の視座から独自の解決策を提案すること」という研究目的の実現を図る。 その一方で、「(1)科学と社会、自然科学と人文科学の分離が、思想的にも制度的にも顕著になり始める20世紀初頭に、このような問題意識にたいして科学認識論がどのような解決を求めたのかを明らかにする」という研究目的にかんしては、初年度に集められた資料の分析と整理に集中し、その成果をインターネットなどを介して公表できるように努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が発生した理由は、初年度に購入予定であった書籍のうち、様々な都合で初年度に内に納品できなかったものがあったためであり、ここで発生した次年度使用額は、次年度に購入可能な書籍にかんしてはその購入のために、またそれも不可能なものは、それ相当のものを購入するために使用する予定である。
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