本年度は、まず(1)科学と社会、自然科学と人文科学の分離が、思想的にも制度的にも顕著になり始める20世紀初頭に、このような問題意識に対して科学認識論がどのような解決を求めたのかを明らかにするという研究目的(1)のために、前年度の海外での資料収集の研究成果の分析を進めると同時に、その思想的な中心人物でもあった、ジャン・カヴァイエスの重要著作である『論理学と学知の理論について』の翻訳を行い、その解説を付すことで、これまでの研究成果を公刊した(ジャン・カヴァイエス『構造と生成II 論理学と学知の理論について』近藤和敬訳・解説、月曜社、2013年)。 つぎに、(2)について、科学と社会のあいだに模索されるべき新たな関係の構築という現在の問題関心にたいして、科学認識論研究の視座から独自の解決策を提案することという研究目的(2)のために、海外および国内から複数の研究者の協力を得て、研究会を行った。また、これに関連して、雑誌『現代思想』で対談、および翻訳と論文という形で、その成果を公刊した。
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