研究課題/領域番号 |
24720013
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
稲岡 大志 神戸大学, その他の研究科, 研究員 (40536116)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ライプニッツ / 数学の哲学 / 西洋近代哲学 / 図形推論 |
研究概要 |
平成24年度は、ライプニッツの数理哲学に関して、主に初期草稿の検討を通じて、数学研究と数理哲学研究の連関を探る研究を行った。これにより、ライプニッツが実際の数学の定理の証明においては、図形の持つ特性を生かす仕方で定理の導出を行っている点を明らかにした。たとえば、無限小解析において、ライプニッツは、無限個の角を持つ多角形を円と見なすことで求積問題の解決を試みる。しかし、こうした極限への移行を図形上で正確に作図することは不可能である。ライプニッツは、定義上は幅を持たない線分をある場合には無限小の幅を持つ四角形と見なすことで証明の核となるアイデアを図形上で表現し、面積の計算自体は数式によって行うというように、図形と数式の特性を利用している。こうした図形の用法が、幾何図形を用いた証明での補助図形の作図のアルゴリズムの記号法化というライプニッツの幾何学研究の動機付けとどう関連付けられているのかについては、想像力概念の規定を解析と幾何学においては異なるものとして捉えていたという理由は既に明らかにしたが、ライプニッツ自身の数理哲学との関連は未だ十分に明確にされたとは言いがたい。この点に関しては今後も継続して研究を行うことで、ライプニッツの記号的認識が実際の数学にどのように具現化されているのかを明らかにしたい。 また、上記の研究を通じて明らかにされたライプニッツの図形観の現代的意義を探る研究も合わせて行った。よく知られた、ヒルベルトによる公理的手法を用いたユークリッド幾何学の形式化とは異なる立場、すなわち、図形に文同様の推論機能を認める立場からの形式化研究が近年登場している。また、幾何学に限らず、数学のさまざまな分野において図形が果たしている機能を取り出す研究も行われている。これらの研究動向を踏まえた上で、図形推論の哲学的基礎や図形に関する研究がいかなる哲学的重要性を持つのかを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ライプニッツの初期数学草稿を精読することで、かれの数理哲学と数学研究のつながりはある程度明らかにすることができた。また、当初考えていた仮説のうち、より踏み込んだ資料調査が必要な部分も明確にすることができた。以上より、おおむね研究は順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成24年度の研究により新たに明らかになった課題も含めた検討を行う。具体的には当初の予定通り、平成25年度はライプニッツの哲学草稿の検討を主に行い、平成26年度にそれまでの研究成果を総合し、ライプニッツの数理哲学の全体像を解明する予定である。研究成果は研究書として公刊することを目指しており、そのための準備作業も合わせて行う。 また、平成24年度に入手予定であった資料のうち、既に電子化されて無償公開されているものや入手に時間のかかるものがあったため、その分の研究費は次年度に使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
西洋近代哲学、数学史研究、数学の哲学研究などに関する資料を揃える。また、より効率的に研究を進めるため、既に入手した資料の電子化も積極的に行う。そのための環境も整備する予定である。さらに、研究者と意見交換を行ったり、研究成果を学会等で発表するための旅費として研究費を用いる。
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