研究課題/領域番号 |
24720013
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
稲岡 大志 神戸大学, その他の研究科, 研究員 (40536116)
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キーワード | ライプニッツ / 数学の哲学 / 西洋近代哲学 / 図形推論 |
研究概要 |
平成25年度は、主にライプニッツの幾何学研究と空間論との関係を解明する研究を行った。先行研究によれば、最晩年のライプニッツは幾何学研究とクラークとの往復書簡で議論される空間論を総合的に捉える構想を持っていたが、本研究はこの主張を一次資料の精査によって検証し、その主張の妥当性を確認した。さらに、中期(1695年頃)に関しても最晩年と同様の関連を主張する先行研究を批判的に検討し、これまでの研究と合わせて、この時期については両者の関連性を積極的に支持することは難しいことを一次資料の読解に基づいて論証した。こうした成果を踏まえた上で、特定の時期の関連性だけではなく、ライプニッツ哲学の初期からの展開を視野に入れた上で、より広い時期での幾何学研究と空間論の結びつきを解明するために必要な一次資料の整理も合わせて行った。ライプニッツの幾何学研究と空間論の結びつきの変遷については継続して研究を進める予定である。 また、上記の研究に平行して、ライプニッツの幾何学研究の持つ現代性を解明する研究として、現代の数学の哲学における図形推論についての研究も行った。具体的には、ユークリッドの『原論』における図形を用いた証明に関する近年の研究を批判的に検討し、背理法を用いた証明において図形が果たす役割についての分析が十分なものではないことを指摘した上で、そうした不備を補完する新たな分析を試みた。また、幾何図形のみならず、他の数学の記号についても図形推論の形式化研究を応用させることで、推論の媒体という側面と数学的構造を記述する媒体という数学の記号の二つの側面に着目する必要があるという研究課題を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ライプニッツの幾何学草稿や空間論草稿を精読することで、かれの幾何学研究と空間論の結びつきを、中後期についてはある程度明らかにすることができた。また、得られた研究成果により、今後より踏み込んだ資料調査が必要な部分も明確にすることができた。現代的意義についての研究も具体的な問題点とその解決の見通しも得られている。以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、平成25年度までの研究成果を総合し、ライプニッツの数理哲学の全体像を解明する予定である。また、ライプニッツ数理哲学の現代的意義に関する研究として、図形推論に関する研究も進める予定である。研究成果は研究書として公刊することを目指しており、そのための準備作業も合わせて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に入手予定であった資料のうち、既に電子化されて無償公開されているものや入手に時間のかかるものがあった。その分の研究費は平成26年度に使用する予定である。 西洋近代哲学、数学史研究、数理哲学研究などに関する資料を揃える。また、より効率的に研究を進めるため、既に入手した資料の電子化も継続して行う。そのために必要な環境も整備する予定である。さらに、研究者と意見交換を行ったり、研究成果を学会等で発表するための旅費として研究費を用いる。
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