最終年度(平成26年度)はライプニッツ哲学におけるモナド概念の展開と数学研究との関連性を解明する研究を進めた。具体的には、ライプニッツが単純実体であるモナドの存在にコミットする1695年以降のモナド概念の展開を、モナドと身体的部分、一性の原理としてのモナド、モナドと合成実体という観点から、一次資料の読解および二次資料の批判的検討によって明らかにした。その結果として、1700年以降のモナド概念の展開と空間概念の展開との間には何らかの相関関係があるのではないかという見通しを得ることができた。この点に関しては今後の遺稿研究により解明を進める予定である。 また、ライプニッツ哲学において単純実体であるモナドの存在がどのように正当化されているのかという点に関して、先行研究を踏まえつつ、解明を進めた。その結果、ライプニッツはまず実体の一性を論証し、続けて実体の単純性を論証することで、モナドの存在論証としていたことを明らかにし、さらに、合成実体の存在に対する態度が曖昧であるために、単純実体のみの存在論の確立には成功していないという先行研究の指摘を踏み入って検討し、近年刊行された全集に収録された資料などを参照すると、必ずしもそうとは言い切れないことを示すことができた。その上で、ライプニッツのモナドロジーは、存在者の世界を基礎的存在者を中心とした還元関係による構造を持つ世界として解明することを目指しているという解釈を提示し、この解釈であれば、最晩年のモナドロジーにおけるモナド概念の多義性など、伝統的にテキスト解釈上の問題とされてきた点を整合的に説明できるという道筋を示すことができた。今後は遺稿研究を進めることでこの解釈の説得力を高める研究を行う予定である。
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