研究課題/領域番号 |
24720014
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
佐藤 慶太 香川大学, 大学教育開発センター, 講師 (40571427)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カント / テーテンス / 経験主義 / ドイツ / 想像力 / 心理学 / 超越論的哲学 |
研究概要 |
本研究は、(1)テーテンスの認識論の全体構造を解明し、(2)それを踏まえてカント認識論の成立過程、および内的構造について改めて考察し、(3)さらに18世紀のドイツ哲学の枠組みの中でのカントの位置の再検討を行うことを狙っている。 平成24年度は、特に(1)と(2)に関わる研究を行った。 まず、テーテンス『一般思弁哲学について』(1775)を詳細に読解し、この書がカント『純粋理性批判』(1781)に与えた影響を、特に「超越論的(transzendental)」という概念を軸に考察した。この研究の成果が、論文「テーテンス『一般思弁哲学について』とカント」(『香川大学教育学部研究報告第I部』第139号所収)である。一連の作業から、カントの超越論的哲学を18世紀ドイツ哲学史に改めて位置付けるための一定の見通しを得た。今後はテーテンスのもう一つの主著『人間本性とその展開についての哲学的試論』(1777)の読解をもとに、上記の見通しを実質化していくことが課題となる。 さらに「『純粋理性批判』「図式論」の役割とその哲学史的位置について」という題目で口頭発表を行い、このテーマに関してカント研究者諸氏と議論を行った。この発表では、カントのカテゴリーの理論とカント以前の概念論との連続性を明確化し、近世哲学における概念をめぐる論争という文脈に沿って「図式論」を読解することを試みた。ここでは、「想像力」、「抽象」といった概念がポイントとなるが、今後はこれらの概念についての研究と、上述の「超越論的哲学」に関する研究とを有機的に関連付けることも課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(1)テーテンス認識論の全体構造を解明し、(2)それを踏まえてカント認識論の成立過程、および内的構造について改めて考察し、(3)さらに18世紀ドイツ哲学の枠組みの中でのカントの位置の再検討を行うことを狙っている。交付申請書では、平成24年度に、全体の基礎作業としてドイツで資料収集を行うこと、そして(1)を達成すべく、テーテンスの主要著作、Ueber die allgemeine speculativische Philosophie(1775)、Philosophische Versuch ueber die menschliche Natur und ihre Entwicklung(1777)を精読すること、を計画していた。ドイツでの資料収集については、本務校の業務の関係で平成24年度中に行うことができなかったので、研究費の繰り越しを行い、平成25年度中に行う。テーテンスの主要著作の読解は計画通り進んでおり、その成果の一部を論文として『香川大学教育学部研究報告第I部』第139号に掲載することができた(「テーテンス『一般的思弁哲学について』とカント」)。 また計画では、平成25年度にカントがテーテンスのアイデアをどのように摂取し、変容させたかを検証する、としていたが、平成24年度に行った口頭発表「『純粋理性批判』「図式論」の役割とその哲学史的位置について」は、一部この内容に関わる部分を扱った。 また計画にはなかったが、キール大学で行われている、テーテンスの講義ノート編集プロジェクトの主要メンバーとコンタクトをとり、情報交換を行うことができた。このことは、今後の研究を進めるにあたって非常に有益であった。 以上のように、計画のうち実行できなかったものもあるが、一方で計画を上回る成果も治めることができたので、研究の達成度を「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載した計画にはなかったが、テーテンスの講義ノートを編集するプロジェクト(キール大学)の主要メンバーと平成24年度中にコンタクトをとることができた。また国内においても、平成24年度中に、テーテンスを視野に入れつつ研究を行っているカント研究者と知り合うことができた。彼らと連絡をとりあうことで、ドイツにおける最新の研究状況について知見を得るとともに、当該の問題についての意見交換を行うことができる。この点を大いに利用して、研究を推進させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画していたドイツでの資料収集は、本務校の業務との兼ね合いもあり、平成24年度中に実施することができなかった。そのための研究費を平成25年度に繰り越している。平成25年度はこの研究費を利用してドイツでの資料収集を行うが、その際、平成24年度中にドイツの研究者とのやりとりによって得た情報も活用して、国内で入手不可能な関連資料を余すところなく収集したい。平成25年度に請求する研究費については、当初の計画通り使用する。
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