研究課題/領域番号 |
24720014
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
佐藤 慶太 香川大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40571427)
|
キーワード | テーテンス / カント / 超越論的哲学 / 観察哲学 / 心の能動性と受動性 / 創作力 / 図式論 |
研究概要 |
平成25年度の活動は、1)海外での資料収集、2)読解作業、3)発表の3つに分けられる。 1)3月から8月にかけて、キール大学の研究者と連絡を取り、資料収集のために有益な情報を揃えた。これに基づいて、8月、ドイツに赴き、ベルリン国立図書館、キール大学図書館、ショレスヴィッヒ・ホルシュタイン州立図書館にて、国内で入手困難な文献の複写を行った。具体的には、1900年前後に出版されたテーテンス関連の博士論文、著作集に収められていないテーテンスの著作群、テーテンスの著作の書評、テーテンスの書簡である。キール大学では当地のテーテンス研究者とディスカッションをする機会もあり、今後の研究を進める上で有意義であった。 2)上記の活動をふまえて、テーテンスの『人間本性とその展開に関する諸試論』を読解した。読解から「認識の成立における判断の働き」というトピックにおいて、トマス・リード、テーテンス、カントの間に、いわば議論の積み重ねともいえる展開が見いだされること、テーテンスの「創作力(Dichtkraft)」論とカントの「図式論」との関連が、両者の幾何学的概念のとらえ方に着目すると明確になること、そして18世紀後半におけるドイツの思想状況を読み解くにあたって、心の能動性と受動性の問題が一つの軸になりうることが明らかになってきた。豊富な参考文献を収集したことで、読解の精度、質を高めることができた。 3)この成果を、カント研究会第279回例会において「カントとテーテンス-transzendent(al)をめぐって」というタイトルで発表をした。国内のカント研究者と質疑応答を行い、今後の研究のために有益な示唆を多く得た。このほか18世紀ドイツの大学の情況に焦点を絞った「近代的大学創設期におけるドイツの大学論と市民的責任感の育成」という論文(加野・葛城編『高等教育における市民的責任感の育成』所収)を発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の最大の課題であったドイツでの資料収集も、首尾よく終えることができた。文献を入手したことももちろんだが、ドイツのテーテンス研究者と意見交換を行うことができた点も、今後の研究の進展を促すものである。また読解作業においても、研究実績の概要において示した一定の成果を得ており、年度末にはこの成果を発表することもできた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度から、電子メールを利用した、海外の研究者とのやり取りがはじまっている。このやり取りをさらに活発化させて、研究を推進させる。 文献に関しては当初予定していたものをほとんど揃えることができたので、これを最大限活用して研究の質を向上させる。 読解の手法に関して言うと、18世紀後半におけるドイツの思想状況を「心の能動性と受動性」という問題を軸にして読み解くという見通しができたので、これに基づいて、当初予定してた「18世紀ドイツにおける思想状況の解明」を行いたい。 また平成25年度末におこなった研究発表の内容をさらに洗練させて、学会誌に投稿する予定である。
|