研究課題/領域番号 |
24720016
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
竹村 亮 日本大学, 商学部, 助教 (70583665)
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キーワード | 論理学 / 証明論 / 線形論理 / 図形推論 |
研究概要 |
20世紀論理学は「文(記号)表現」に基づく「数学における演繹推論」を対象として発展してきた。しかし実際にわれわれが日常的に行う推論においては、図形表現が用いられたり、また演繹推論に限らないさまざまな論法が用いられたりする。本研究では線形論理および部分構造論理を用いて、図形を用いた推論および非単調・非演繹的日常推論の数理モデルを構築することを目指し、本年度は以下の研究を行った。 1. BarwiseのHyperproofを基にheterogeneous reasoningについて分析し、表を用いた推論を形式化して、Heterogeneous Logic with Tables (HLT) を導入した。表(対応表)は、たとえば簡単なスケジューリング問題などにも用いられる基本的な図形表現の一つである。本研究では、そのような表を用いた推論を、文に基づく推論部分と、表の行と列の構造に基づく推論部分に分け、両者を組み合わせたheterogeneous systemとして形式化した。また、表を用いた場合の推論と、表を用いずに文表現(論理式)のみを用いた場合の推論とを、計算量および認知的な観点から比較した。これにより、推論における表の特徴、効率性等が明らかになると考えられる。 2. オイラー図を用いた反例構成について分析した。オイラー図は、論理式に対応するものとして、形式的な証明の構成要素として扱えることが近年実証されているが、他方で、伝統的な集合論的モデルの図形表現としてもみなすことができる。本研究ではこのアイデアに基づき、オイラー図を反例モデルの図形的表現と見なして、反例モデル構成をオイラー図証明として形式化した。この結果は、論理学・数学教育へのオイラー図の応用を促進するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請時とくらべて教育に対するエフォートが大幅に増大したため、図形推論研究、日常的推論研究ともに当初の研究計画通りには遂行することができず、修正を施さざるを得なかった。 図形推論研究については、研究計画の順序を多少変更して、heterogeneous reasoningの研究を行った。とくに、表を用いた推論をheterogeneous logical system として形式化し、表を用いた推論の効率性を分析した。 また、教育に対するエフォートの増大に合わせて、日常的推論研究の一環として、オイラー図・ヴェン図や表などの図形表現の、論理学・数学教育への応用についての研究を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下のような研究を行う。 1. 前年度に導入した表を用いた推論システムHeterogeneous Logic with Tables (HLT) の計算量分析、認知科学的分析をさらに深化させる。 2. オイラー図を用いた反例構成システムとオイラー図を用いた証明構成システムの計算量および認知的性質をそれぞれ分析し、オイラー図を用いた推論システムの特徴づけを行う。また、本研究で開発してきたオイラー図・ヴェン図システム、対応表システムを、論理学・数学教育に応用し、e-learningコンテンツを含めた教材開発を行う。 3. オイラー図やヴェン図およびグラフ表現と言語表現を組み合わせたHeterogeneous Logicを構築するために、BarwiseのHyperproofを拡張する。また、それを状況意味論やチャンネル理論を基に線形論理の枠組みで分析し、一般的なheterogeneous reasoningを線形論理に基づいて形式化して証明論的な分析を行う。 4. 日常的な推論分析については、帰納的推論や類推などの、通常の論理学で扱われる演繹推論以外の推論方式について分析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時とくらべて教育に対するエフォートが大幅に増大したため、研究が計画通りに進められず、また適当な国際学会での研究成果の発表機会が本年度は1回にとどまったため。 研究代表者は現在、オイラー図表現を用いた反証(反例図)構成の方法に関する論文を投稿予定である。また、対応表と言語表現を組み合わせたheterogeneous logical systemに関する論文を発展させ、さらに研究を進めた上で投稿する予定である。さらに、これまでの分析に基づいて、オイラー図、ヴェン図、表、グラフを用いた推論の比較研究を進めている。これらの論文を近年度中に発表する予定であり、それらの論文校閲費に本研究費を使用する予定である。 またこれらの成果を学会やワークショップで発表するための海外・国内旅費、および、他研究者と議論するための海外・国内旅費にも本研究費を使用する予定である。
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