平成26年度に行なわれた研究は、(1)平成25年度以前に実施された研究内容の公開(論文および招待講演での発表)と、(2)田辺哲学における象徴概念を発展史的・思想史的解明の二点に区分される。 (1)論文 “The Logic of the Transcendence of Life─Tanabe’s Theory of ‘World Schema’ and Miki’s ‘Logic of the Imagination’ ─” においては田辺元の「世界図式論」と三木清の「構想力の論理」の親近性を両者のハイデガー受容、とりわけハイデガーの『カントと形而上学の問題』からの影響という視点から論じ、両者の哲学が共に“生の論理”として捉えられることを明らかにし、象徴概念と密接に関連している田辺哲学における生の意味・位置を明確にした。招待講演「象徴と無─田辺哲学における象徴概念の由来と意味―」においては、田辺の思想において象徴概念が、いつの時点でまたどのような必然性から登場したのかを解明することを目的としたものである。西田の表現の思想に対する批判と、波多野精一や高山岩男などの1930年代の象徴をめぐる議論がその背景にあったことを論じ、そのことを通して田辺の特徴が象徴を「無いもの/ことの現れ」として理解する点にあることを明らかにした。 (2)研究計画にしたがって、象徴概念の意味を田辺の象徴概念の意味を、彼の象徴詩理解およびハイデガー批判との関係で解明する作業を行なった。
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