研究課題/領域番号 |
24720027
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
河崎 豊 大谷大学, 文学部, 助教 (70362639)
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キーワード | 印度学 / ジャイナ教 / 断食死 / 死生学 |
研究概要 |
当該年度も昨年度に続き、『バガヴァティー・アーラーダナー』の校訂及び翻訳作成のための諸作業を行なった。具体的には以下の通りである。 (1)当該文献の古写本の収集について、まず欧州の各大学図書館に所蔵される写本のうち、所在が明らかなストラスブール大学写本2点を、パリ第三大学教授ナリーニ・バルビル博士の仲介によって入手することができた。またインド国内の写本の状況については、引き続き各種写本カタログの収集と確認に努めたが、現時点では当該文献の写本をカタログ上に見出せていない。2013年12月23日より30日までインドに出張し、グジャラート州アーメダバードにあるL.D.Institute of Indology のジテーンドラ・シャー所長と当該文献の写本収集に関して意見を交換し、またパタンにあるジャイナ教写本図書館においても意見交換を行なった。 (2)原典の解読については、ほぼ毎週1回、複数の研究者と輪読会を開催して、研究代表者が準備した仮校訂本と下訳に対する検討会を開催した。当該年度は特に同文献が説く戒律部分のうち、不淫戒に関わる部分を扱った。 (3)研究成果の発表として、『筑紫女学園大学・短期大学部人間文化研究所年報』24号(2013年)に「Bhagavati Aradhanaにおける「真実」と「虚偽」」を(pp.29-43)、『中央学術研究所紀要』42号(2013年)に「Bhagavati Aradhana 873-874」を(pp.58-72)を発表した。また、当該文献が説く不偸盗戒と関連して、日本印度学仏教学会において、「ジャイナ教におけるadattadanaの諸解釈」と題して発表し、その成果を英文"Interpretations of adattadana in Jainism"(『印度学仏教学研究』62-3,2014)として出版した(pp.1113-1118)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該研究の採択年度に任期付常勤教員として着任したことにより、当初予定していたエフォート率およびそれに伴う研究計画を若干変更せざるを得なくなったことが大きな理由である。また、当該文献はジャイナ教空衣派が伝承した文献だが、空衣派ジャイナ教諸寺院が所蔵する写本群の系統だった写本目録がほとんど出版されていない状況であること(少なくとも、誰もが容易に入手できる形では出回っていない状況であること)も大きな要因である。
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今後の研究の推進方策 |
写本の収集と原典の再校訂および読解が今年度も中心の作業となる。 写本について、今年度は南インドにある空衣派ジャイナ教寺院が所蔵する写本の状況を知るための予備的な調査を行なう。空衣派ジャイナ教は白衣派ジャイナ教と異なり、自らが所蔵する写本を組織的に整理しカタログ化することに情熱を示さないため、現地に直接赴いて寺院ごとに状況を知る必要がある。今年度は、カルナータカにおける空衣派ジャイナ教研究の権威であるハンパ・ナガラジャイア博士(マイソール大学名誉教授)と意見交換を行ない、カルナータカ州における空衣派ジャイナ教寺院の写本状況を把握し、ナガラジャイア博士の仲介によって実際に1つもしくは2つの空衣派ジャイナ教寺院で調査を行なう。 原典の読解および校訂作業については、引き続き定期的に研究会を開催し、校訂本作成についての確認を行なう。 また平成25年度の研究成果については、学術誌および国内外の学会で発表を行ない、研究者による批判的な意見を募る。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では、当該年度に2度の短期海外渡航(インドおよびイギリスでの研究発表)を予定していた。しかし、2012年度に任期付の常勤職に採用されたことにより生活環境が変化し、また2013年度は任期最終年度であったため、2014年3月に予定していたイギリスでの研究発表を中止せねばならなくなった。次年度使用額が生じた理由は以上のものによる。 次年度使用額については海外渡航で使用する。具体的には、当該年度にできなかったイギリス(ロンドン大学SOAS)での発表のための渡航費および現地滞在費として使用する。
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