研究課題/領域番号 |
24720029
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
志賀 浄邦 京都産業大学, 文化学部, 准教授 (60440872)
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キーワード | 仏教論理学 / アルチャタ / ジャイナ教論理学 / アカランカ / 多面性論証 / 国際情報交換(インド) |
研究概要 |
平成25年度に予定していた研究テーマは、「ジャイナ教思想に対するアルチャタの立場」であったが、原典研究・思想研究いずれに関しても、計画に沿って研究を進めることができた。具体的な研究内容は以下の通りである。 アルチャタ著『論証因一滴論注』に見られる、ジャイナ教徒の主張する多面的見解とその批判部分について、前年度に引き続きテキスト校訂と翻訳を進めた。その過程で、この箇所が、ヴァーディデーヴァスーリ以外の他のジャイナ教論理学者によっても引用され、批判されていることが明らかになった。また上記のジャイナ教学説は、その出典が同定されておらず、同箇所の翻訳研究も存在していなかったが、多面的見解を主張するこのジャイナ教学説の具体的内容を分析し、ジャイナ教文献との比較を試みた結果、出典をある程度まで確定することができた。 当該年度に実施した研究の成果は以下の通りである。2012年開催のジャイナ教研究会において発表した内容をまとめた論文:“Conflicts and Interactions between Jaina Logicians and Arcata”が2013年10月に『ジャイナ教研究』に掲載された。また2013年8月には、島根県民会館で開催された日本印度学仏教学会第64回学術大会において、「ジャイナ教論書に紹介されるアルチャタ説」というタイトルの口頭発表を行い、その成果は2014年3月に同学会誌に刊行された。さらに2014年3月には、以前に執筆したものではあるが、本研究の内容にも深く関わる論文:「ジャイナ教徒による刹那滅論批判」(『奥田聖應先生頌寿記念インド学仏教学論集』)も刊行された。また2013年9月には、資料収集および現地の研究者との交流のためインド・アーメダバード(L.D.研究所およびその周辺)に出張した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度の研究テーマは、「ジャイナ教思想に対するアルチャタの立場」というものであったが、前年度のジャイナ教研究会での発表において、すでに先取りする形でこのテーマについて論じていたため、今年度はそれを厳密に検証し、学術論文の形にすることに専念することができた。その結果、8月の日本印度学仏教学会での発表において、次年度の研究テーマ:「アルチャタとアカランカの関係」にも取り組むことができ、研究の先鞭をつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度が最終年度となるが、現在までのところ、研究は順調に進展している。次年度に予定している研究テーマ:「アルチャタとアカランカの関係」については、先行研究等を踏まえて「アカランカがアルチャタを知っていた可能性が高い」という仮説を立てたが、この仮説に関してさらに考察を進め、何らかの結論を導き出したい。 なお研究計画には明記していなかったが、研究全体の総括として、刹那滅論証(仏教)と多面性論証(ジャイナ教)の根拠・手段となる両学派の遍充論についても比較検討を試みたい。特に仏教論理学派の遍充論(推理論)については過去の研究成果を活かす形で、2014年8月にドイツ・ハイデルベルクで行われる第5回ダルマキールティ学会において "On the meaning of bahyartha in Dignaga's and Jinendrabuddhi's theories of inference"というタイトルの研究発表を行う予定である。
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