本研究では、仏教論理学者アルチャタとジャイナ教論理学者達が存在論をめぐる諸問題に関して「対立」するものの、推理論あるいは遍充論においてはむしろ類似する思想を有しており、両者の間に「相互交渉」があったのではないかという可能性を提示した。両者の「対立」については、アルチャタ著『論証因一滴論注』に紹介されるジャイナ教思想とそれに対する批判部分のテキストを読解することを通して、アルチャタが想定していたジャイナ教思想がいかなるものであったかを明らかにした。また「相互交渉」に関しては、ジャイナ教徒パートラスヴァーミン及びアカランカとアルチャタの見解がいずれも内遍充論的傾向をもつという類似性を指摘した。
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