研究課題/領域番号 |
24720030
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
岡本 健資 龍谷大学, 政策学部, 講師 (10425043)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 仏教学 / 美術史 / インド |
研究概要 |
本研究の目的は、紀元後2世紀頃の西北インド・クシャーン朝下に活躍した仏教詩人アシュヴァゴーシャ作『ブッダチャリタ』を中心とした、釈迦の誕生から涅槃までの「今生の全生涯」を「時系列」に沿って記述するという特徴を有する仏伝表現活動の成立背景についての検討を行う点にある。そのために、上述の特徴を有する仏伝(「一代記グループ」)である『ブッダチャリタ』・『仏所行讃』・『仏本行経』・『僧伽羅刹所集経』、そして、簡略な仏伝と見なし得る箇所を内包する『アショーカ・アヴァダーナ』について、ストーリーの構造に関する比較検討を行い、当該地域の仏伝を表現した美術・考古資料も考察対象に加えて文献資料と比較する。 平成24年度は、当初の計画の通りに、仏伝「一代記グループ」の構造について比較対照を行うための「全対照テキストの作成」作業を実施し、この作業を通して、各資料の構造上の共通点・相違点の幾つかを見出した。また、仏伝「一代記グループ」の特徴を明示するために、従来行われてきた仏伝文献資料群の比較研究について総括を行った。その成果の一部は「仏伝文献とガンダーラ」(平成24年7月15日開催の国内シンポジウム「美術と文献から見るガンダーラの仏教」)として公表した。また、全対照テキストと対応する仏伝図作例リストの作成に向けて、最新の研究成果の情報収集を含めた作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するため交付申請書で記された平成24年度計画は概ね3項目((1)~(3))に集約できる。以下に、その達成度について点検、報告する。 まず(1)「『ブッダチャリタ』を中心として、各資料を精査しながら、「全対照テキストの作成」を行う」点については、実施することで計画は達成されている。なお、平成25年度にも継続実施するため、平成24年度段階では未完成である。次に、(2)「「一代記グループ」の各資料が有する特徴が、どの時代や地域に特有のものなのかを考察する」点については、「一代記グループ」の特徴について検討し、【研究実績の概要】の通り成果を公表することで一定程度達成された。但し、それら想定される時代・地域が仏伝「一代記グループ」を生んだ背景については、全対照テキストの完成をまって再度検討すべきと考える。最後に、(3)「全対照テキストと対応する仏伝図の作例リスト作成に向けて、最新の研究成果の情報収集を含めた作業を行う」という点については、作例リスト作成に加えて研究論文リスト作成を行うことで計画は達成された。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も、交付申請書所載の研究計画に沿って研究を進める。具体的には、前年度に引き続き「一代記グループ」仏伝資料群の全対照テキストの完成を目指す。次に、「一代記グループ」各資料が有する特徴について、その思想背景、歴史的背景を検討する作業を続行し、その時代性と地域性を明らかにする。さらに、「一代記グループ」の成立と緊密な関係を有すると考えられるガンダーラ美術における仏伝図との比較研究を行う。当該地域の仏伝図と文献資料との異同などを明確にしていくことで、西北インドにおける仏伝表現活動の具体的様相を探る。最後に、以上の内容を総括し、最終的な分析、すなわち、クシャーン朝下の西北インドに起こった「一代記」的仏伝グループの成立に至る要因、歴史的思想的背景について、文献学的検討、美術資料の分析を統合した立場からの指摘を行う。以上より、本年度には、仏伝「一代記グループ」について、全対照テキストとともに、文献学・美術史学両面からの考察結果を含めた報告書を提出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、文献資料と美術資料との比較作業が必要である。そのため、美術資料を画像データとして取り込むためのスキャナーや、それらを出力し吟味するためのカラープリンターなど、美術資料検討用のPC周辺機器(合計123,000円)及びこれに伴うデータ保存用メディアやカラープリンタ用のインクなど(合計190,000円)の購入を初年度(平成24年度)に予定していた。しかし、平成24年度は、文献資料収集と「全対照テキスト」作成し、その内容精査に作業が集中したため、当初予定していた上記機器の購入の大部分を次年度に回したことで差額(261,318円)が発生した。 次年度(平成25年度)の研究費の使用計画としては、まず、上記の機器の入手を行い、それ以外の研究費については申請の通りに執行する予定である。
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