本研究は、「釈迦の今生の全生涯」を時系列に沿って記述するアシュヴァゴーシャ作『ブッダチャリタ』及び同様の特徴を有する仏伝について検討し、その成立について吟味することにあった。その方法として、『ブッダチャリタ』の成立地とされる西北インドに位置するガンダーラの仏伝図と、『ブッダチャリタ』等の文献資料を、その配列状況や構造の点から比較した。結果、両者に構造上の類似点が存在することが確認できた。それゆえ、このような「釈迦の今生の全生涯」を語る仏伝の発生に、ブッダに対する西北インドという地域特有の見方が関係している可能性を確認できた。
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