研究課題/領域番号 |
24720033
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
清水 節 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (30410294)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | GHQ/SCAP / 宗教法人法 / 宗教法人令 / 国有境内地処分 / 社寺保管林 / 社寺上知令 / 神道指令 / W・P・ウッダード |
研究概要 |
本研究の目的は、次の①~③である。①国内外の史料を用いて、占領期における「宗教法人法」の起草過程の全容を解明する。②同法の制定協議に関わった民間情報教育局(CIE)、文部省、宗教界の三者の主張・見解と、その背後に存在した日米間における「信教の自由」「政教分離」「宗教法人」観の相克について、その実相を詳らかにし、要因を分析する。③この研究成果を通じて、GHQの宗教政策や近代日本の政教関係史に関する再評価を行うための新たな視座を提示する。 一年目である本年度は、宗教法人法起草の前史を研究する目的で、昭和22年に制定された「社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律」(国有境内地処分法)の立案をめぐるGHQ・日本政府・宗教界の協議過程を調査した。この過程で、文部省は宗教法人令の改正をCIEに提案していたことが判った。宗教法人法起草協議の端緒となったのは、その前身である宗教法人令の解釈変更・改正をめぐる議論であるが、国有境内地処分法の立案過程で提案されたものは、管見の限り、最も早い時期の改正案である。また、国有境内地処分法の合憲性をめぐって、CIEと民政局(GS)で対立していたことが確認できた。GHQ内において「政教分離」「信教の自由」の理解は、一枚岩でなかったことが窺える。これらの研究成果は、学会報告と論文で発表した。 さらに、本研究に関連して、報告者がこれまでに進めてきた研究の成果を『日本占領と宗教制度改革』としてまとめた。また、米国オレゴン大学にてウッダード文書(W.P.Woodard Papers)を調査し、宗教法人法に関連する史料を閲覧・複写した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、4月~7月にかけて国会図書館憲政資料室所蔵のGHQ文書を定期的に調査し、史料の収集整理を行った。同時に、宗教法人法の起草過程を考察する上で有効となる「国有境内地処分法」の立案協議に関する調査を進めた。この成果を6月に開催された国史学会(於:國學院大學)で報告し、12月に論文(金沢工業大学日本学研究所『日本学研究』第15号掲載)を発表した。さらに、報告者がこれまでに進めてきた研究と本研究の成果を合わせて『日本占領と宗教制度改革』としてまとめた。これは、9月に博士学位論文として國學院大學へ提出し、審査に合格した。これを基にして、来年度の調査研究の成果を盛り込んで、加筆修正したものを出版する計画を立ている。3月には、アメリカのオレゴン大学図書館が所蔵しているウッダード文書を調査した。ウッダードは宗教法人法の制定協議で、GHQ側の責任者であった人物であり、彼の所有していた同法関係の史料は重要である。それらの史料を閲覧し、必要なものを複写した。以上より、3カ年計画の1年目で予定していた調査・研究は、概ね終わらせることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に収集した史料の整理、分析を進める。同時に、週末や長期休暇を利用して、国内外の史料調査を実施する。海外史料調査としては、アメリカのナショナル・アーカイブスが所蔵している占領軍関係史料から宗教法人法に関連するものを選び出し、必要なものを複写する。国内調査では、占領期の宗教系雑誌・新聞や、関係者の文献を調査する。これらの調査成果をまとめ、最終年度に図書を出版できるよう原稿の執筆を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備品として、デスクトップパソコンとプリンター、デジタルカメラ、書籍を購入する。 国内出張として、国会図書館憲政資料室でのGHQ文書調査(3日間)を3回実施する。また、國學院大學や駒澤大学、龍谷大学など宗教系大学図書館で宗教系雑誌や新聞の調査(3日間)を3回実施する予定である。 外国出張として、ナショナルアーカイブス(米国メリーランド州)で占領軍関係文書の調査を14日間行う。 消耗品として、収集した史料の編纂作業用品を購入する。
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