最終年度となる本年度は以下5点で研究を進めた。 1 国内機関所蔵資料の調査・収集 調査対象の時期・内容は、1930年代から1950年代までの、地域における「転向」の諸相、戦後知識人の転向論、これに関連する社会思想史、社会運動史、政治史、地域史である。最終年度ということで成果の発表に重点を置き、資料収集は国内機関(国会図書館憲政資料室、同志社大学人文科学図書館、京都大学附属図書館など)における補足的なものにとどめた。 2 聞き取り調査の実施 関東地方で転向関連の聞き取り調査を行い、同時に所蔵資料の調査もあわせて行った。 3 データ・ベースの作成・公開 上記1で収集した資料の整理及びデータ入力を押し進め、その一部をホームページで公開した。 4 成果の公開 『文明構造論』10号に「「非国民」の憂鬱 思想犯保護問題と転向者の行方」を、出原政雄編『戦後日本思想と知識人の役割』(法律文化社、2015年)に「「戦後思想」における転向論 思想の科学研究会・吉本隆明を中心に」を発表した。これ以外には「1950年前後における京大学生運動(上)」を『京都大学大学文書館研究紀要』13号に発表した。 5 新たな知見 「「非国民」の憂鬱 思想犯保護問題と転向者の行方」は、共産主義運動の周辺に居てその後転向した人々が、司法省が押し進める思想犯保護観察事業のもとでどのような軌跡を辿ったのかを明らかにした。「「戦後思想」における転向論 思想の科学研究会・吉本隆明を中心に」は、戦後知識人が戦時・戦後期の「転向」と向きあうなかで、新たな変革を紡いでいく過程を明らかにした。
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