本研究の目的は、「転向」をめぐる「歴史空間」を設定し、その内部の諸項目(思想、地域、人間関係)の連関を総体的に明らかにすることである。具体的な研究対象は、大量「転向」の発端となった佐野学・鍋山貞親ら共産党幹部の「転向」、一般党員の「転向」、戦後の転向論などである。1930年代以降の「転向」とその主体を上記目的・方法に基づき再検証することで、戦時・戦後思想における「転向」及び転向論の重要性を喚起し、「転向」内における運動理論の転換、大衆や国家との関係に焦点を当てつつ、「転向」が新たな「革命」や「革命」を目指す共同体を再措定する場として機能していたこと等を明らかにした。
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