本研究は、仏教的世界観を中心に捉えた「天皇」の社会・思想的意義について考察した。本研究が捉える「天皇」とは政治権力機構における天皇としてではなく、歴史叙述や編年体によって表現された「歴代」という認識下にある。これらを叙述するコンテキストやエクリチュールを読解することにより、政治・文化的イデオロギーとして形成された「天皇」の社会的意義を導いた。 平安時代中期以降に登場し近代になり解体される仏教的世界観の変遷は、一つの歴史認識の変成過程を提示する。各時代の中で作られた「天皇」とは、歴史の連続性や時代的普遍性を求める文化相伝や継承を目的とする、歴史叙述や系譜の起源をになう思想的存在としてあった。
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