研究課題/領域番号 |
24720042
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
小林 亜起子 東京藝術大学, 美術学部, 助手 (00618275)
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キーワード | 美術史 / フランス / ブーシェ / 素描 / タピスリー / 装飾美術 / デザイン / ロココ |
研究概要 |
平成25年度においては、ブーシェによるタピスリーの下絵と関連素描に関する資料収集を行い、これらを前年度に作成したブーシェによるタピスリーの下絵と関連素描のカタログの画像を完備したフォーマットに入力する作業を進めた。これと同時に、関連資料を精査してファイリングを進めるとともに、未収集の資料・画像データを特定・入手のための作業を行った。 秋季(10月はじめ)は、フランスの二つの都市、パリとオービュッソンに滞在して資料収集・作品調査を実施した。パリではオテル・ド・スービーズにおいて企画されていた18世紀のタピスリー展にてタピスリーの実見調査を行った。オービュッソンではオービュッソン・タピスリー美術館にて企画された大規模なタピスリー展にて調査を実施するとともに、同地で開催されたタピスリーのシンポジウムに参加した。そこでは本研究を進める上で有益な資料や情報を入手し、研究者同士の意見・情報交換を行うことができた。 冬季(1月)には、ジュネーヴに滞在し、ラート美術館にて開催中の17世紀のタピスリー展に赴き、本展を企画した学芸員とともに実見にもとづく作品の調査を遂行した。またローザンヌのトムズ・ポーリー財団に所蔵される17~18世紀フランスのタピスリーの一部の調査も行った。ブーシェの作品および18世紀の装飾美術作品が所蔵される美術歴史博物館、アリアナ美術館にも赴いた。さらに本研究を進める上で不可欠な最新文献情報と研究状況を把握するために、ジュネーヴ大学において行われたタピスリーのシンポジウムに参加し、タピスリー研究者や学芸員とのあいだで情報を交換した。 上述の実見調査で得られた観察・所見にもとづいて、情報の入力作業を行い、これらの調査を活かしていくつかの論文を執筆・公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブーシェの下絵と関連素描に関する調査・作業はだいたい予定通りに進行している。執筆のスケジュールも順調である。平成25年度はフランス以外のヨーロッパの所蔵先の実見調査旅行を予定していた。渡航先としては、本研究に関連するタピスリー展およびそれに関連するシンポジウムが開催されたフランス(パリ、ローザンヌ)、ジュネーヴを優先的に組み込む必要が生じたため(それぞれ平成25年度10月、翌年1月に実施)、24年度に実施予定のロンドンのウォーレス・コレクションでの作品調査は、26年度に延期することとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究の調査方法や作業進行スケジュールに関する変更はなく、予定通り計画を遂行する。26年度においてとりわけ重要な実施項目は、前年度に進めたカタログ化の作業を終え、カタログの全体的な改訂の作業を実施することである。 また、本年度は昨年度に遂行できなかった海外の実見調査旅行を行う必要がある。その際には、研究に関連する展覧会企画やシンポジウムとの関係もふまえて渡航先を決定する予定である。ただし、調査旅行のスケジュールは、本研究の最終目的であるカタログの完成を念頭に、臨機応変に検討する。また、業務との関連から海外調査期間が必ずしも予定通り長期間できないことも配慮し、国内から海外に所蔵される作品データの収集も並行的に行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は海外調査のための旅費の使用が見込まれたため、物品費にあてる予定であった直接経費を次年度に先送りした結果、次年度使用額が生じた。 次年度の研究費は、まずカタログ作成のために必須となる平成25年度に実施できなかった海外調査のための旅費として優先的に使用することを考えている。残りは物品費にあてる。タピスリーのための美術作品写真費、下絵や素描に関連する文献購入費としての出費が見込まれるほかに、カタログ化のための必要なPDFファイルを作成・編集・加工・管理するためのソフトウェアであるアドビ・アクロバットの購入も予定している。
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