研究課題/領域番号 |
24720046
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 尾道市立大学 |
研究代表者 |
深谷 訓子 尾道市立大学, 芸術文化学部, 准教授 (30433379)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ファン・マンデル / ホーホストラーテン / 17世紀オランダ / バロック美術 / 制作論 |
研究概要 |
本年度は予定していた通り、カーレル・ファン・マンデル、サミュエル・ファン・ホーホストラーテン、クリスペイン・ファン・デ・パッセ、ウィレム・フーレーらの文献に登場する制作論の読解と比較検討を進め、とくに写実主義と結びつけられることの多いオランダ17世紀絵画にあって、「記憶」がその制作過程で如何なる役割を果たすことを期待されていたのかという問題について考察を加えた。ファン・マンデルやホーホストラーテンのテクストから「記憶」にまつわる個所を抜粋し、読解した結果、目に見える現実の「再現」を行う画家が、既存の作品や現実に存在するモチーフの「借り手」や「模倣者」という位置づけを脱し、真に創造者としての段階に至るために、同化作用としての「記憶」に重要な役割が割り振られているということが明確に見えてきたように思われる。この成果は論文の形にまとめており、現在校正作業中である。 また本科研とも密接にかかわる研究として、ファン・マンデルの北方画人伝読解のための用語解説としての論考を準備した(平成26年2月に刊行予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたテクストのすべてを完全に扱えたわけではないが、主たるものについては予定通り目を通して分析を行うことができたこと、またこれも当初の予定通り、「記憶」という観点から論考をまとめたことなどから、おおむね順調に進展していると判断している。また初年度の読解の過程で、今後取り上げていくべき着眼点や、研究の見通しがいっそう明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
残されたテクストの読解と、重要な個所の抄訳作業を続行する。またこうした制作にかかわるテクストを、(1)個々のモチーフの再現に際しての技術や画材にかかわるもの、(2)構図の組み立てや物語(場面)解釈といった、総合的な構想の段階に属するもの、(3)より理念的な次元の発言など、いくつかに分類し、著者ごとに比較検討を行う予定である。またその際、どのような評言が頻出するかということについても注意を払い、26年度、27年度に、他国の同時代美術理論との比較を行う際にそうした結果を考察に取り入れる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
一身上の都合から、24年度に在外調査の機会が持てなかったため、それを補うために、夏期に比較的長期で、オランダ国立図書館およびオランダ美術史研究所(RKD)での調査機会を持つ。また画像資料や通常の複写が不可能な貴重図書などの資料収集のために、デジタル一眼レフカメラほか、調査用の機材を購入する。
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