研究課題/領域番号 |
24720046
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研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
深谷 訓子 京都市立芸術大学, 美術学部, 准教授 (30433379)
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キーワード | 制作論 / 北方画家列伝 / オランダ17世紀 / 絵画制作 / 美術理論 |
研究概要 |
継続的に進めてきたカーレル・ファン・マンデル「北方画家列伝」の読解に一区切りをつけ、昨年度より進めてきたオランダ語の美術用語にかんする検討の結果を、解説論文として執筆した。「実物に即して(naer 't leven)」や「構想して(精神から uyt den gheest)」などのキーフレーズにとどまらず、作品の制作や評価にかかわる専門用語や評言に検討を加えることで、17世紀のほかの美術文献における用語法などとの比較を行う準備が整った。これらの成果は、『カーレル・ファン・マンデル「北方画家列伝」注解』(尾崎彰宏ほかとの共著、中央公論美術出版、2014年)として刊行された。 また、並行してサミュエル・ファン・ホーホストラーテンの『絵画芸術の高き学堂への手引』(1678年)の読解と分析も進めており、ファン・マンデルとの比較や、重要な内容部分の抄訳の作業は一定の進展をみた。とくにスケッチやデッサンに関しては、それらが前述の「実物に即して」行われる描写の作業と「構想して」組み立てられていく絵画全体の構図との間を如何に連結させていたかということについてファン・ホーホストラーテンの考えをある程度明確に捉えることができたと考えている。こうした作業の過程で、とくに2013年夏季休業期に行った在外調査のおりに資料収集も重ね、オランダ17世紀美術理論に関する先行研究にもあたった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定している4年間の研究期間のうち2年目となる今年度であるが、きわめて重要度の高いファン・マンデルのテクストの検討に一定の目途がたち、用語法の検討が進んだこと、さらにファン・ホーホストラーテンの重要箇所について抄訳の作成と項目別の分類が進んでいる点などは計画通りの順調な進捗だと言える。一方で、よりマニュアル的な色彩の強い書物の読解や、作品と突き合せての考察などは、当初の予定ではもう少し進んでいるはずであった。しかし遅れは軽微なものであり、またその理由も(新職場で研究環境の整備に時間がかかったなど)明らかであり、かつ対応済みであるため、総体的に見ておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
抜粋したテクストの分類と考察を進め、オランダ17世紀美術文献における「制作論」について、概要をまとめる作業を行う。訳出したテクストや考察結果を、原典資料研究や論文のかたちで公刊できるよう、執筆を進める。また同時に、同時期の他国の美術理論における用語法や制作論との比較を行うべく、検討すべき主だった著作の選定と、読解に取りかかる。ただし他国の美術理論との比較については、予想以上に時間がかかるおそれもあるため、ある程度オランダの状況に見通しがつき、如何なる点での比較が有意義であるかが明確になってから着手する予定であるため、さらに最終年度に持ち越す可能性もある。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定書籍が今年度3月時点での研究費残額よりも高額であったため、次年度に購入することを決定したために次年度使用分が生じた。 他国の美術理論も比較対象として検討・考察していくため、そうした文献等の収集(書籍購入費・文献複写費)に使用する。また17世紀美術文献の収集や、テクストと実作品とを突き合わせて制作の実際をより具体的に考察するための作品調査、関連の深い研究発表が行われるシンポジウム・会議等への出席を目的とした旅費を使用する(調査予定先としてはオランダおよびドイツ)。さらに、訳出したテクスト、収集した資料などの整理・編集等のため、パソコン周辺機器、ファイリング関係の事務用品などにも支出する。資料整理のアルバイトに謝金等も使用する。
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