研究課題
カーレル・ファン・マンデル、サミュエル・ファン・ホーホストラーテン、ウィレム・フーレーの制作論の読解と比較検討を進展させた。これらの成果については、論文や翻訳の公開というかたちではまとめていないが、次年度にこれに基づく論考を準備する予定である。制作論を追うために当時の美術文献を読み進める過程で、次のような成果を取りまとめた。まず、ファン・マンデルの「イタリア画家列伝」部分のうち、ヴァザーリの抄訳ではなく、独自に執筆がなされた最後の数章を翻訳し、当該部分の意義に関する解説と注解を付した研究成果を公にした。フレスコ画の制作途中の改変についてなど、オランダ美術文献のなかでは言及の少ない技法に関する記述も含まれており、比較対象として本研究にとっても興味深い知見を得ることができた。また、北方画家列伝部分も再検討し、ファン・マンデルが過去の自国の美術の展開に対して如何なる意識を有していたか、ファン・マンデルを時代区分、画期の意識という点から再読した。バロック期の画家にとって過去の作品の参照は不可欠な要素のひとつだが、その「過去」をどのように認識しているかということについて、一定の知見を得ることができた。そのほか、オランダ人画家たちがイタリア(ローマ)で制作した祭壇画等についても個別研究を行った。とくにファン・バビューレンがローマのスペイン人パトロンのために制作した《キリストの埋葬》を中心に、ネーデルラント出身の画家たちと、親スペイン派の人脈とのかかわり、またそれを踏まえた先行作例の参照などについて考察し、コロキウムにて英語の口頭発表を行った(論文は現在校正中)。
2: おおむね順調に進展している
テクスト読解は順調に進展しており、それに伴う考察も進めているが、当初予定していなかった関連テーマに踏み込んで研究を行ったことから、当初計画部分については若干の遅れも生じている。しかし全体としては、そうした予定外の研究成果から益された部分も大きいため、おおむね順調に進展していると判断できる。
当初の予定通り、最終年度にあたる平成27年度には、これまでの読解結果を踏まえて、17世紀オランダにおける絵画制作論に関する論考を取りまとめたい。また、読解したテクストを広く注解付翻訳として公にすることができるよう、訳文の推敲と注解の整備の作業を進展させる。そのためには、美術史関連の文献が充実したオランダやドイツ等での作業が必要となるため、夏季休業期間を中心に在外調査に赴き、成果のとりまとめを行う。
春季(2,3月)に在外調査を予定していたが、想定外の校務等により実現が不可能だったため。
在外調査を行うほか、当初は予定になかったドイツの学会での発表が決まったため(10月)、その渡航費に充てる。
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京都市立芸術大学美術学部研究紀要
巻: 59 ページ: 19-32
平成23年度~平成26年度科学研究費補助金基盤研究(B)研究成果報告書(課題番号23320032)美術史における転換期の諸相(研究代表者:京都大学大学院・文学研究科・教授・根立研介)
巻: n.a. ページ: 113-132
Sacred and Profane in Early Modern Art: Proceedings of Kyoto Art History Colloquium, held at the Graduate School of Letters, Kyoto University, October 4, 2014
巻: n.a. ページ: 未定