研究課題/領域番号 |
24720050
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大島 幸代 早稲田大学, 會津八一記念博物館, 招聘研究員 (60585694)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換(中国) / 中国 / 仏教 / 美術史 / 天王 / 護法 / 伝法 |
研究概要 |
本研究は、中国で生まれ展開した多種類の護法神像の全体を見通し、南北朝時代後期という時代が護法神信仰史の画期となりえた要因、中国という土地で護法神が殊更に重視された要因を解明することを目的とする。科学研究費補助金(研究活動スタート支援)の採択課題「中国南北朝期の仏教美術にみる護法神信仰とその造形に関する基礎的研究」(2010~2011年度)の発展的研究という位置づけにある。 今年度は、中国南北朝期から唐代に至る護法神像の現存作品の実地調査として、インド・デリー国立博物館が所蔵する敦煌将来絵画のうち、護法神像を描いた絵画作品の熟覧調査を行い、その成果を踏まえて図像学的な分析・検証を進めた。あわせて護法神信仰の中国的展開の特質を明らかにするために、インド西部の石窟造像、および各地の博物館が所蔵する関連作例の現地調査も行った。 これに加えて、『大正新脩大蔵経』史伝部収録の『高僧伝』『出三蔵記集』『続高僧伝』『宋高僧伝』等の僧伝史料、および仏教関連の石刻資料を中心に、伝法・持戒の僧に関する史資料を収集・釈読し、護法神信仰との関わりを探った。南朝・宋の曇摩密多、南斉の法献、隋の曇摩掘叉、唐の玄奘、道宣、善無畏等、ある特定の善神(護法神)の加護を受けたという逸話が伝えられる高僧を抽出することができた。中には各種護法神の造形化の契機に関わる逸話もあり、今後、護法神信仰あるいは造形活動の隆盛の背景を探る手がかりとなると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、現地調査による中国南北朝期から唐代に至る護法神像の基礎情報の収得と、それを踏まえた図像学的分析・検証を行うこと、および文献史料・石刻資料などを博捜し、護法神信仰に関する史資料の収集・分析を行うことが柱となる。今年度は、この両方面からの研究のいずれもおおむね計画通りの成果をおさめることができた。現地調査については、インド・デリー国立博物館の所蔵する敦煌将来絵画の熟覧調査の許可を得ることができたため、同様の敦煌絵画を所蔵する大英博物館・フランス国立ギメ東洋美術館における調査計画を変更して、インドにおける作品調査を実施した。その際、「護法神信仰の中国的展開」の特質や性格を明らかにする手がかりを得るために、インド西部アウランガーバード周辺の石窟造像における護法神像および関連作例の現地調査も実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、中国南北朝期から唐代に至る護法神像の現存作品の実地調査を行い、そこで収得した基礎情報をもとに図像学的な分析・検証を行う。この基礎作業を継続的に行い、造形美術からみた護法神信仰史の総体的な構築を可能にする強固な基盤づくりを行っていく。現地調査先には、公刊された図書資料などをもとにした事前調査により、護法神の作例が豊富に残ると推定される地域―中国河北省・河南省・陝西省周辺など―を優先的に選定し、「神王」「善神」などと称してまとめられる正体不明の護法神像を含む、問題解明の鍵となる護法神像の作例の抽出に務める。 またそれと並行して、石刻資料を中心に、伝法と持戒の僧の事績と護法神信仰に関する文字記録を収集・分析していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、中国河北省・河南省の現地調査、およびフランス国立ギメ東洋美術館、大英博物館等の所蔵する敦煌絵画の調査という、2度の作品調査を計画している。その際に、現地の研究者の援助、および大学院生の調査補助が必要となるため、それぞれに謝金を支払う。 調査対象作品のうち敦煌絵画は、絹本や紙本の着色絵画が大半であり、細密な描写を伴う作品もあることから、写真撮影に要するデジタル一眼レフカメラの近接撮影用レンズ(NIKON AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED)を購入する。 中国における調査対象作品には、近年新たに発見された資料も多数含まれるため、公刊された書籍・論文・報告などを参考に、関連資料も含めて基礎情報の収集を行う必要がある。そのため、図書資料の購入費および資料複写費を使用する。
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