本研究の目的は、18-19世紀のロシア正教古儀式派イコンをとりあげ、古儀式派イコンに頻繁に描かれたモチーフを整理し、同一のモチーフの国家正教会のイコンやイコン儀軌、ルボーク、写本挿絵等との比較、分析を通じて、古儀式派イコンにおける図像上の特徴を明らかにすることであった。古儀式派イコンの多くに通じるモチーフとして、古儀式派成立の教義の関わるもの(二本指の十字の印、キリストの綴り方)、1722年シノドが禁止した図像(聖クリストファー、三本手の聖母等)を分析した。古儀式派では一貫してこれらのモチーフが多く描かれた一方、国家正教会では時代によって古儀式派的モチーフの扱い方が異なることが分かった。
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