研究課題/領域番号 |
24720054
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神奈川県立歴史博物館 |
研究代表者 |
角田 拓朗 神奈川県立歴史博物館, その他部局等, その他 (80435825)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 洋画 / 石版画 / 銅版画 / 洋風画 / リアリズム |
研究概要 |
研究初年度として、研究全体を見渡す作業をおこなった。主だった作業として、画論の分析と作品研究とがある。前者では画論の分析とともに、特に明治期の小説等においての記述に注意をはらった。いまだ中間成果報告にも満たない状況であり、今後さらにおしすすめていきたい。後者では、特に19世紀半ばから展開される洋風表現の受容のうち、空間表現に焦点をあて具体的な作品とともに研究を進めた。銅版画や石版画などの展開について、線遠近法や空気遠近法といった学習の過程をも想定しつつ検証作業をおこなった。洋風画との比較検証とおこなったものの、ある程度まとまった内容として提示することがかなわなかった。その最大の理由は、洋風画とその表現がある種孤立した存在であり、特定の「様式=style」ないしは「画派=school」として認知できるほどの存在でありかつ広範囲で展開されたものではなく、幕末期すなわち19世紀中葉の銅版画や、明治中期すなわち19世紀末の石版画などと対応して語ることが難しいのである。ある種想定されていたこととはいえ、作業を進める上で実数として改めて理解したところであり、このことは本研究のひとつの成果といえる。さらに洋風画については詳しく検証をおこなっていくことで、比較考察を深めていきたい。当該年度の研究成果としては版表現において、いわゆる西洋絵画技術にもとづく「リアリズム」にそった空間把握を達成することになるのがおよそ19世紀末であり、それには線遠近法的な空間認識というよりもむしろ色彩による空気遠近法の理解が重要であったことを論証した。その理解を促すのは水彩画であり、画家たちの真摯な研究が明治初頭から継続されていたが、その一般的な普及は19世紀末から20世紀初頭にかけての日本であった事実とも当該研究で得られた知見とは重なるところであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では調査を着実におこなうことを想定していたが、諸般の事情により、必ずしもすべての側面で順調に実行できているとはいえない。特に海外調査を想定していたが、先方の都合により、実現できていない点が遺憾である。計画当初から調査対象機関との交渉による遅延は予想されていたため、そのほかの研究領域を着実に進めることで補っていきたい。具体的には、画論の分析や容易に調査可能な機関・個人等のもとでの調査研究は先行して進め、研究全体には支障がないよう進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、前年度の積み上げとあわせるために、特に銅版画と洋風画ないしは洋風表現について集中的に研究を試みる。このとき、特に司馬江漢の画論が重要であり、その議論も含めて、平成26年度中には一定の成果を報告するよう心掛けたい。ただし、本研究の特徴は19世紀という「幅」であり、ある種の展開論として記述するよう心掛けたい。そのためにも、当該年度には着実に作品調査をおしすすめるとともに、関係研究者との会合を実現させたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は継続して調査研究の漏れを補うとともに、一部成果を論考等の形式で刊行する予定である。それにより、さらに当該研究に関する関心を高め、より多くの有識者から意見等を頂戴することで、有益な研究の進展を遂行するよう努めたい。
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