本調査研究は、19世紀の日本絵画史という新たな枠組みの構築を目的としたものだった。西洋絵画受容という軸のもとに、従来特徴的に論じられてきた二つの要素、洋風画と洋画の接点に焦点をあてたところ、両者に技術的類似性、教授伝達の系譜などの観点からして、共通点が少ないことを確認した。それは19世紀日本絵画史構築について弊害となるものではなく、19世紀前葉に同時代発生的に西洋絵画への希求が高まり、中葉において本格化するという時代展開をより明確に論じることとなった。さらにその前葉以後の高まりと世紀後半以後すなわち明治となってからのち、西洋絵画を国策として学ぶ際の視覚変容を促す下地となった存在として、銅版画が重要な役割にあったことを指摘した。以上結論付ければ、これまで近世と近代の時代区分を重視し論じられてきた枠組ではなく、新たな枠組すなわち19世紀という枠組が成立すること、その自然な歴史記述が可能であることを提示できた。さらにこの19世紀という枠組が、東アジアそしてヨーロッパ、アメリカともつながる、つまりは世界史的ひろがりの視点も促されることも指摘し、将来の研究へとつながることも示唆した。
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