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2013 年度 実績報告書

『青い山脈』の系譜学

研究課題

研究課題/領域番号 24720061
研究機関千葉大学

研究代表者

千葉 慶  千葉大学, 人文社会科学研究科, 人文社会科学研究科特別研究員 (40440218)

キーワード戦後民主主義 / 日本映画 / 石坂洋次郎 / ジェンダー / 視覚文化 / 青い山脈
研究概要

本研究においては、製作当時から現在に至るまで、『青い山脈』のみが「民主主義啓蒙映画」として内実を問うことなくレッテル化され、作品的内実および明確な政治的意義について論じられることのなかった石坂洋次郎原作映画作品を分析した。
本研究は、石坂映画における「民主主義」表現に見られるフォーマットを明確に指摘した。つまりそれは、第一に「自己決定権の拡張」である。主人公をはじめとする登場人物は、自己の思想信条行動に関する決定権をどのような他者に対しても譲り渡すことをよしとしない。自分のことは自分で決める。たとえ女だからといって男に従属するいわれはなく、生徒であるからといって先生や学校に従属するいわれもなく、どのような権力者にも従ういわれはない。第二は、「自己決定権の拡張」の結果必然的に生じる他者との軋轢を解消する方法として、暴力を採用せず、対話の精神で対応することである。いずれも1940年代末の日本社会の水準として特に極端なイデオロギーに走ったものではない。例えば、政府発行の『新しい憲法のはなし』にも同様のメッセージを見て取ることが出来る。なお、近年の「戦後民主主義批判」の議論には、『青い山脈』を取り上げてこれを「アメリカ民主主義啓蒙」であると批判するものがあるが、これは全くの的外れであることが判明した。『青い山脈』や『山のかなたに』には、確かにアメリカに強く影響され、先のフォーマットに従った「民主主義」を実践しようとする女性主人公が登場するが、いずれの場合も、土地に根差した男性主人公によって、その教条主義がたしなめられるという顛末が描かれる(これは原作も映画も同様)。つまり、石坂映画のケースに限っていえば、戦後民主主義啓蒙は決してアメリカの言いなりになることとして表現されたのではなく、日本的・土着的に〈消化〉されるべきであると表現されていたことが明らかとなった。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 石坂洋次郎映画はいかに「民主主義」を〈消化〉したか2014

    • 著者名/発表者名
      千葉慶
    • 雑誌名

      千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書

      巻: 279集 ページ: 181‐190

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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