研究課題/領域番号 |
24720064
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
葛西 周 東京芸術大学, 音楽学部, 助手 (00584161)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 音楽学 / 映画研究 / 植民地表象 / 日本 / 台湾 / 朝鮮 / 満洲 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究は映画における音楽を主な調査対象とし、①植民地の映画音楽に委ねられた国家をめぐるイメージの象徴性およびその表象戦略と、②映画に用いられた音楽を通じた、植民地における自文化/異文化表象との二点を明らかにすることを目的としたものである。植民地の事例について資料調査を進め、これまで研究をおこなってきた日本国内の事例との比較を試みることで、映画そしてその音楽において国家より促されたイメージの認識・再構築・発信が、その場で表象された音楽へいかに反映されたかを考察する。 初年度にあたる当該年度は、先行研究を整理しながら時代背景を確認するとともに、日本国内で収集可能な資料の調査にあたった。国立国会図書館・東京大学近代日本法政史料センター所蔵の新聞雑誌を主たる資料とし、植民地で日本人により発行された新聞雑誌の映画関連記事データベース作成に着手した。とりわけ今年度は、①日本国内で1950年代までに公開された映画における音楽の扱われ方とその意味づけのされ方、②満洲の映画製作状況および音楽使用状況を主に調査した。 研究成果の一部として、日本の初期トーキー映画における音楽の使用法とその内容に関して、第10回中日音楽比較研究国際学術会議で口頭発表をおこない、さらにその内容を論文としてまとめたものが同学術会議の論文集に掲載された。また、満洲における音楽の位置づけと映画との関連について、日中戦争史研究会で口頭発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にしたがって、国内で収集可能な『映画雑誌』、『キネマ旬報』、『音楽評論』、『レコード音楽』といった映画雑誌および音楽雑誌における映画音楽へ言及した記事のデータベース化を進めている。それと並行して、研究対象となり得る映画作品のリスト化をおこなうなど、初年度にすべき予備調査を実施した。 また、研究成果の発表も積極的におこない、関連するテーマの研究者からフィードバックを得た。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に着手した国内の資料整理を継続するほか、旧植民地所蔵史料の調査にあたる。台湾では国立台湾大学音楽学研究所を拠点としながら、同研究所に所蔵されている植民地期の音楽創作関連資料に加え、国立台湾歴史博物館に所蔵されている植民地期映画フィルムおよび製作の際の資料や、台湾国史舘台湾文献館蔵の台湾総督府文書類を調査する。韓国においては、韓国映像資料院を拠点とし、同資料院所蔵の植民地期映画フィルムおよび製作時の資料、ならびに韓国政府記録保存所蔵の朝鮮総督府文書類の調査にあたる。現時点で国外での調査活動の中心となる国立台湾歴史博物館には175本、韓国映像資料院には28本のフィルムの植民地期映画フィルムの所蔵が確認できており、それらの作品の音楽内容に関して分析をおこなう。また、中~長編映画のみならず、ニュース映画などの報道映像をも本研究は扱い、その中で音楽がいかに用いられていたか、あるいは音楽そのものに関連するような報道としてどのようなものが確認できるかについて調査を実施する。 加えて、映画研究者および歴史研究者を招いてシンポジウムを開催し、ここまでの研究成果を公開する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は旧植民地所蔵資料の概況を把握するため、現地調査を実施する。したがって、当該年度の研究費のうち7割程度は、資料収集調査のための台湾・韓国への出張費に充てる。また、研究成果公開のため、映画研究者および歴史研究者による本テーマに関連する研究発表と、関連映画の上映、さらに映画に対するピアノの生伴奏を伴うシンポジウムの開催を計画しているため、登壇者・演奏者への謝金と上映する映画フィルムの賃借料を経費として計上する予定である。
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