最終年度にあたる当該年度は、戦前・戦中期の映画および映画音楽関係記事に関する前年度までの予備調査に基づき、資料調査の補完とデータベース構築作業をおこなった。台湾では、國立傳統藝術中心臺灣音樂館、國家電影資料館、國家図書館、國立臺灣図書館、新竹市文化局影像博物館において映画および映画音楽に関する資料調査を進め、蔡瑞月舞蹈研究社では蔡瑞月の舞踊が収録されている貴重なフィルムを閲覧した。さらに、蔡瑞月文化基金会董事長であり蔡瑞月の直弟子であったシャオ・ウォーイェン氏と面会し、台湾のモダンダンスで用いられる音楽について聞き取り調査を実施した。 また、これまでの資料調査で収集したデータの分析を実施した。特に、国立台湾歴史博物館所蔵の植民地期映画フィルム168本の作品に関して、それぞれの映画に音楽が付されているかどうかを確認した上で、使用されていた音楽をの傾向を整理し、音楽と映像との間に何らかの機能的連関が見られるか、フィルムの内容によって使われる音楽の種類や用法に差異があるか等について調査を進めた。その成果については10月に招聘された植民地期映画フィルムに関する研究会にて発表をおこない、それをまとめたものが査読付論文として3月発行の研究誌『中国語中国文化』に掲載された。 さらに、前年度に口頭発表をおこなった、満洲における映画音楽に関する研究成果をまとめた論文が、『多角的視点から見た日中戦争:政治・経済・軍事・文化・民族の相克』に収録された。 そのほかの研究成果のアウトプットとしては、チェンマイ大学芸術メディア技術学院で開かれたThe 4th Inter-Asia Popular Music Studies Conferenceに参加し、明治期から戦後に至るまでの日本の音楽史について基調講演をおこない、海外を視野に入れた成果の発信を積極的に試みた。
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