研究課題/領域番号 |
24720067
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
石田 美紀 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70425007)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 俳優 / スペクタクル / 音響 / 身体 / デジタル技術 |
研究概要 |
課題1「アニメーションおよび外国映画の吹替における声優のパフォーマンスとの比較分析」について、トーキー移行後の1930年代アメリカ・アニメーション、および1950年代・60年代の日本・アニメーションの黎明期における映像および音響技術に関する資料収集とその分析を行い、アニメーションが推進してきた声と映像の協働の技術的変遷を明らかにする基礎作業に集中した。論文「痕跡・記号・運動―実写フィクション映画の存在論」(大浦康介編『フィクション論への誘い 文学・歴史・遊び・人間』世界思想社、2012)において、デジタル技術が可能にする画像加工の浸透によりアニメーションとの融合をみせる実写物語映画の存在論を再確認した。 課題2「デジタル技術時代における映画スターの要件の確定」については、デジタル化による俳優身体表象の先行例として、60年代ハリウッド映画に着目した。当時ハリウッド映画は映像・音響技術の進化とプロダクション・コードの崩壊を経験した。結果、俳優身体はそれまでにないスペクタクルの場として演出された。60年代以前と以後を画する変化は、効率のよい話法から、効率を度外視した視覚的かつ聴覚的なスペクタクルへの移行として現れたが、現行の物語映画におけるデジタル化は、60年代ハリウッド映画の転換の延長にある。デジタル技術による俳優身体の演出もまた、60年代の変容を引き継いでいる。とりわけ、俳優を運動と轟音のただなかにおくオートバイ映画の演出は、デジタル技術と俳優身体の関係においては重要な先行事例となる。こうした物語とスペクタクルを調停する俳優身体のありようについて、論文「オートバイによって映画は何を描くのか 1950年代・60年代のオートバイ映画」(栗原隆編『感情と表象の生まれるところ』ナカニシヤ出版、2013)で考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎的な資料収集および分析に加え、当該研究テーマを発展させた論文二本(研究実績の項を参照されたし)を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
課題1については、前年度に引き続き、関連資料の収集・分析を行い、前年度の日本国内での調査成果をまとめ、美学会、映像学会において論文を発表する。映画学だけでなく、美学、美術史、歴史学、文学など隣接関連分野の研究者からレビューをうけることで、引き続き理論的考察を重ねる。また、アニメーション制作関係者へのインタビュー調査を行う。 課題2については、国内調査では入手困難な資料(ポスターやパンフレット、予告編)の収集および視聴調査を、9月に14日間の日程でアメリカ議会図書館、およびカリフォルニア大学ロサンゼルス校フィルム&TVアーカイブにおいて行う。そして、関連資料の分析と作品のテクスト分析を有機的に結合させる作業に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の課題1および2を円滑に遂行するべく、本年度の残額を旅費として使用する。
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