研究課題/領域番号 |
24720067
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
石田 美紀 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70425007)
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キーワード | 実写 / アニメーション / 身体 / 受容 / 印刷媒体 |
研究概要 |
1.アニメーション制作会社への聞き取り調査実施 日本の商業アニメーションの中心的スタジオである東映動画(東映アニメーション)において1960年代から80年代にかけてプロデューサー兼監督を務めた人物に聞き取り調査を行った。この調査によって、親会社である実写映画製作会社・東映と同社との関係が明らかになった。実写とアニメーションは、ともに動画(Moving Picture)であるにもかかわらず、両者には社会的・文化的へだたりがあったことが判明した。こうした実写/アニメーションをとりまく社会的・文化的差異は、映画における俳優身体とアニメーションにおけるキャラクター、およびキャラクターを演じる声優身体の受容における差異にも呼応する重要な論点である。 2.論文発表 実写映画における身体と、アニメーションにおける描かれた身体がいかに受容者に作用するのかを考察するための準備作業として、論文を二本発表した(「絵と読者、そして写真」『ユリイカ 特集・中原淳一と少女イラストレーション』第45巻第16号、157-165頁。「娯楽と教育、そして絵―挿絵画家・高畠華宵」栗原隆編『感性学―触れ合う心・感じる身体』東北大学出版会、2013年、257-276頁)。対象はいずれも雑誌を中心とする印刷媒体である。俳優身体表象は映画作品のなかで完結するわけではけしてない。むしろ、作品と並行して、それにまつわる雑誌や広告をはじめとする周辺媒体においても構築されていく。俳優身体が示すハイブリッド性とメディア横断性は、実写映像とアニメーションの差異が限りなく消滅しているデジタル時代においては、ますます顕著となっているため、本年度発表した二編の論文は、デジタル時代における俳優身体表象の核心に接近するために必要なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デジタル時代の俳優身体表象が示すメディア横断性の内実を明らかにするための準備作業を、本年度までに完了することができた。その成果として、写真によって呈示される身体と、絵によって呈示される身体が生み出す差異について、主に受容者の観点から明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
デジタル時代の俳優表象にみられるメディア横断性と操作性を明らかにするために、聴覚的な視点から事例研究を行う。当初の計画ではイタリアにおける外国映画の吹替え状況に関する現地調査が含まれていたが、現行のデジタル環境が成立させる身体と声の関係は、ナショナルな文化にのみもはや固定されるものではないため、より広範に調査する必要があると考える。よって、今後はイタリアを調査対象の一地域として扱う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、聞き取り調査を電話で実施するなど、当初必要であると考えられた旅費が大幅に削減された。また、予定されていたアメリカでの調査も、デジタル環境に助けられて、実際には国内での調査で十分な成果を上げることができた。 本年度は最終年度もあるため、過去2年の調査をより広い研究領域において発表し、映画研究者、さらには美学研究者をはじめとした隣接領域の研究者との研究交流を活発に行うことを予定しているため、前年度の繰り越し金は主に旅費に充てられる。
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