最終年度にあたる本年は、前年度2年間に調査をおこなってきた日本およびハリウッドにおける俳優身体と声の関係を総括し、他の文化圏のそれと比較分析をおこなうために、アニメーションだけでなく、外国映画の吹替えが定着しているイタリア(ローマ、チネテカナツィオナーレ 2014年12月2日から7日)において調査を行った。映画のトーキー化が進んだ1930年代、テレビにおいて日本製アニメーションの放映が開始される1970年代の資料を中心的に調査した結果、映画およびテレビにおける俳優の声は、言葉の伝達表現手段であるばかりか、イタリア国民のアイデンティティを構築するための装置として強力に機能していることが判明した。 また観客による俳優身体の受容状態を、スクリーン外の社会的・文化的状況との関係から考察した論文「高倉健を分有する」「芸術に打ち込む娘たち 占領期の高峰秀子」を執筆・発表し、デジタル時代における俳優身体受容に歴史的座標を与えるための準備をおこなった。 研究集会「現代映像文化における声と身体 アニメーションを中心に」(2015年3月18日 新潟大学)において研究発表「デジタル時代における俳優の声―実写とアニメーションの融合領域」を行い、アニメーションおよび文学研究の専門家との意見交換を通して、デジタル時代における〈声〉の検証を行った。結果、俳優身体の本質としての声の意味づけが、映画本編によってのみ行われているのではなく、DVDに収録されているスタッフや俳優のインタビュー映画において行われていることが明らかになった。
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