本研究の目的は、地域社会における障害者を含むコミュニティ創成において、即興音楽が果たす役割について明らかにすることである。本年度は、様々な障害のある人や音楽以外の舞踊、美術、演劇など複数の領域の表現を得意とするメンバーを募集してコミュニティを新たに創成し、ワークショップと舞台発表を行った。また、前年度より継続して行われている即興を中心とした音楽ワークショップについて、メンバーの価値観や技術の差異と創出される表現の関係から考察を行った。その結果、即興演奏そのもの評価に含まれる未知であることや意外性が、多様な価値観を持つ参加者が集まりコミュニティを創成する際に有効に働くことがわかった。最後に、対話と芸術に関するシンポジウムを実施し、本研究の成果を発表するとともに、会話分析や臨床哲学を専門とする研究者を招聘し、遊びの観点から議論を行った。これらの実践研究から、コミュニティ創成の際に、地域個別の背景やコミュニティの構成員にふさわしい音楽形態を選ぶことの重要性が明らかとなり、今後は方法論を含めて研究を続けていく予定である。
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