本研究は陶磁器以外のセラミックス技術のうち特に陶磁器造形の成形技術として用いられることがなかった粉体を用いた成形技術を陶磁造形表現における成形技術に転用し、陶磁造形における新たな成形方法獲得への可能性を探るため研究を進めてきた。本年度の具体的な研究実績としては、粉体成形の基礎実験から成形応用の実験を進め、ゲルキャスティングを主軸とした粉体成形技術を用いて陶磁器粉体原料の成形に成功した。 成形基礎実験として、ゲルキャスティング成形に適したゲル化配合比の実験、焼成凝固剤の性質実験、成形可能サイズ実験をおこなった。また成形応用実験として、ゲルキャスティング成形体と陶磁器の接合実験、ゲルキャスティング成形体の加工成形実験を行った。またバインダーの違いによる成形体の比較実験を行った。さらに焼成温度の違いによる凝固剤の変容の実験も行った。粉キャスティングの基礎実験として、耐火型を用いた成形実験、原料の配合比による色、質感の実験を行った。 成形応用実験としては、陶磁器造形表現に転用する上で、ゲルキャスティングを主軸としながらも、粉体キャスティング、ガラスキャスティング等複数の技術を組み合わせる活用を見込み、ゲルキャスティング成形体同士の接合実験、ゲルキャスティングと粉キャスティング、あるいは陶磁器と粉キャスティングといった組み合わせ実験、ゲルキャスティング成形体及び陶磁器を粉体キャスティング及びガラスキャストに封入及び接合する実験を行った。 以上の実験によりゲルキャスティングの成形における基礎情報が明確化し、成形体の複雑さやサイズには制限があるものの、陶磁器造形表現の新しい成形技術として活用可能な成形技術を成立することができた。各キャスティングの組み合わせについても一定の基礎情報を獲得した。
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