研究課題/領域番号 |
24720073
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
八代 嘉美 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (30548566)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 幹細胞研究の社会受容 / 再生医療 / サイエンス・フィクション |
研究概要 |
現状の整理を中心として行うことを目的として、現在のSF小説・映画を中心とした文献収集や調査・研究を行った。当初はグレッグ・イーガンやパオロ・バチガルピを中心とする欧米の現代SFの収集を行う予定であったが、日本においても瀬名秀明をはじめとして多くの生物学研究を描いた作品が存在するため、並行して日本SFについても収集を行った。中でも、日本においては大きなヒット作であった漫画、およびそれを映像化したアニメにおいて、「錬金術」が再生医療や幹細胞生物学研究のメタファーとして描かれてきたことなどが明確となり、一般社会の生命感と共鳴している可能性が示された。これと並行し、ISSCR(国際幹細胞学会)や日本再生医療学会などへの学会参加を通じて世界の研究の潮流把握に努める一方、各協力者が主宰する研究室のミーティング、進捗報告などへの参加、また国外の研究者との意見交換を行った。また、こうした研究当事者だけではなく、医療倫理、および文部科学省の規制当事者との意見交換も行い、実際の研究者の意識や研究の進展、その背景にあるさまざまな規制の現状等についても理解を深めることが出来た。さらに、国内各研究機関が作成している再生医療に関するプレスリリースも収集し、メディアに表出した実際の研究について、比較検討を行う準備を開始している。こうした経緯の中で、ヒトと異種動物の細胞が混在する「キメラ動物」を研究することについて、一般社会と研究者の意識において、その許容度が大きく異なることが浮かび上がりつつある。こうした意識は、SF黎明期に描かれたH.Gウエルズの『モロー博士の島』などの進化論SFなどとも通底するものがあり、英文学研究者との協働体制についての予備的検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた出張が行えなかったために海外における一般層の社会受容の調査が行えなかったが、それ以外の学会参加および資料収集については順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
計量社会学、およびメディア論を専門とする研究者との連携を開始し、メディアにおける再生医療・幹細胞研究関連の記事・報道の質的・量的分析の方法の検討を行うことで、いわゆる科学報道の内容を把握し、これらがポピュラーカルチャーにどのような影響を与えているかの理解を深化させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた国際SF学会、および世界SF学会への出張が行えなかったために未使用額が生じたため、今後の出張費に充てる予定である。また、平成25年度には文献、および映像ソフトの収集などにつとめる一方、メディア分析に用いる各種ソフトウェアの購入なども考慮する。また前年同様、ISSCRなどの学会参加を積極的に行い、研究当事者との交流を強化する一方、アメリカや欧州におけるサイエンス・フィクション関連の学会やコンベンションへの参加を行う。
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