研究課題/領域番号 |
24720073
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
八代 嘉美 京都大学, iPS細胞研究所, 准教授 (30548566)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 幹細胞研究の社会受容 / 再生医療 / サイエンス・フィクション |
研究実績の概要 |
18世紀末からの科学革命と19世紀の文学との関係性を中心にした調査を行った。SFの萌芽は1818年のメアリー・シェリー『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』に端を発するとされる(Aldiss 1973)が、これに先立つ18世紀末というのは現代科学の黎明期であり、シェリーが『フランケンシュタイン』の着想を得た背景にも筋肉の運動が電気によって生じるとする論文(Galvani 1791)が社会から大きな反響を得ていた。さらに、その文章中には見世物的に死刑に処せられた囚人の身体に電極をつけ、通電するデモンストレーションを行っていたジョヴァンニ・アルディーニや、『生と死に関する生理学的研究』 (1800年)において、6ヶ月の間にギロチンで刑死した600体もの死体を使って解剖をしていたことを報告した解剖学者マリー=フランソワ・グザヴィエ・ビシャーなど、解剖学的、あるいは実験生物学的な見地に対する嫌悪感などを見出すことができた。さらに、1896年に執筆されたH.Gウエルズの『モロー博士の島』においては、舞台が南緯一度、西経一〇七度付近の海域と設定され、これはメキシコの遥か南、ガラパゴス諸島の西方であることから、ダーウィンの論文に影響されたことが示唆されている。当時ダーウィンが提唱した進化論はキリスト教社会に大きな影響を与えており、ヒトが動物から進化した存在、つまり「動物と根を同じくする」ということ、あるいはベーアが提出した「胚葉論」からは、ヒトが「アダムとイブ」から細胞を引き継いでいない可能性も浮上しており、こうした違和感が、「動物人間」という表象に現れている可能性があり、現在におけるヒト細胞と動物胚を利用した異種キメラに対する嫌悪感の源泉が潜む可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の遅れが影響しているが、論文化前のノート的な論考の執筆や学会における発表は行っており、資料収集については順調に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
日本国内における新規研究協力者を確保し、ディスカッションを行うこと、また本年のワールドコンなどの参加を通じて最終年度に向けた成果の集約をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会用務および勤務先用務につき、予定していた海外出張が行えなかったことなどによる。
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次年度使用額の使用計画 |
新たな海外でのインタビュー調査及び資料の購入に利用し、研究の拡充を図る。
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