本研究は、近代日本における戦死の表象について、〈肉弾〉という身体の破壊表現に注目し、視覚表象とメディア言説とを対象とした資料調査をもとに実証的に考察するものである。 調査の成果から、英雄的かつ悲劇的な物語への共感とともに、戦死者たちが美しく描写された様相が明らかとなった。この共感の背景には、大量の犠牲をうむ戦場のリアリティをとらえんとする姿勢が見られる。この戦死表象は、2つの言説から生じている。熱狂される武士の戦の物語と、新しいエネルギーとテクノロジーとを操作し得る能力を裏付ける近代戦の描写である。血と肉に粉砕される兵士の身体は、この2つの言説の交点に、近代的国民の象徴として横たわっている。
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