研究課題/領域番号 |
24720080
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都外国語大学 |
研究代表者 |
中山 智子 京都外国語大学, 外国語学部, 准教授 (80434645)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / フランス / フランス演劇 / フランス革命 / 女性像 / 異性装 |
研究概要 |
本年度は本研究の基盤となる、革命期に上演された男装のヒロインを持つ舞台作品の特定と上演記録の調査を目的に研究活動を進めてきた。並行して、フランス革命と演劇との関わりを社会史、服飾史、上演史の観点から分析するための基礎的な文献の調査、収集を行ってきた。 まず、革命期のパリの主たる劇場の上演演目の調査を行うため、劇場についての基礎的なデータ収集を行った。18世紀前半には、常設劇場が3つであったのに対して、革命期には劇場が次々と創設され、その数は35に上る。それらの劇場について調べた結果、従来、革命期の演劇としてイメージされていた市民劇や新古典主義の悲劇ばかりでなく、人形劇、アクロバット、サーカス、ヴォードビル劇など、縁日芝居の流れを組む非常に大衆的で娯楽的な演目の上演に力が入れられていたことが確認できた。上演の形態の多様性と娯楽性は、当時の大衆の嗜好を知り、また男装のヒロインを持つ舞台作品を上演の側面から分析するためにも重要である。現在この調査結果について論文を執筆中であり、平成25年9月に学内の紀要に投稿を予定している。 また、18世紀演劇共同研究 プロジェクト(CESAR)の公開データベース等を利用しての調査により、タイトルから男装のヒロインを持つと推定される戯曲(オペラ、パントマイム、バレエ台本を含む)13作品について調査をすすめ、うち3作品を入手し、分析を行っている。結果として1780年代~90年代の戯曲には、「娘兵士」「女脱走兵」などのタイトルを持ち、ヒロインが兵士となって戦場に赴く話が多いことが確認された。個々の作品について、上演に関するデータベース(上演された劇場、ジャンル、初演日と革命期の上演回数、ヒロインを演じた女優名)の作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、フランス革命期にパリで上演された舞台芸術を資料として読み解き、革命期特有の女性像の表象を特定することを最終的な目的とし、平成24、25年度の具体的な目的として男装のヒロインを持つ革命期の上演作品のデータベースを構築、分析し、ヒロイン像の検証を予定している。作品の特定とデータベース作成についての作業はほぼ予定通り進んでいるが、平成24年夏期に予定していたパリでの調査活動を、研究代表者の父の死去に伴う事情で行うことができなかったので、フランスでの演劇専門図書館を利用しての資料収集に関して、今後一層の進捗を図る必要性があると考えている。 また、当初予想した以上に、革命期の劇場の創設、閉鎖、改名などの動きが激しく、劇場の調査に時間がかかっているが、調査結果は革命期の大衆の嗜好を反映するものとして、本研究の目的につながると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、平成24年度の作業を継続して行い、分析対象となる作品を特定する。長期休暇を利用しフランスでの調査先としてパリの演劇関係の資料を有する図書館(フランス国立図書館、アルスナル演劇図書館、オペラ座図書館、コメディ=フランセーズ図書館)に加え、グルノーブル近郊の都市ヴィズィーユにあるフランス革命博物館での調査を予定している。特定された作品について客観的データから革命期の上演作品の特徴を分析するためのデータベースの作成を行い、フランスでの調査結果を加え、上演時期、劇場、ジャンル、公演回数等、どのような作品がどのように上演されたのかについて分析を行う。 さらに、革命期の演劇について、演劇史、文学、歴史学、社会学、服飾史などの研究書および関連資料の調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度はパリ及びヴィズィーユでの調査を予定しており、そのための旅費及び現地での資料購入の費用が必要とされる。また、平成24年度に引き続き、革命期の演劇についての研究書等の購入を予定している。
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