研究課題
若手研究(B)
(A)不動性をめぐる映像理論小史、(B)不動性の映画史、(C)現代美術の映像作品における運動と不動という本研究の三本柱のうち、とりわけ(B)および(C)の研究を重点的に進めた。まず、(C)については、まだ具体的な成果として結実していないものの、関連資料の収集に努めるなど下準備を行った。(B)に関しては、佐藤真のドキュメンタリー作品である『阿賀に生きる』と『SELF AND OTHERS』における写真の力を論じた論文を発表したほか("La puissance de la photographie : A propos de deux films de Makoto Sato")、フランソワ・トリュフォーの全作品を対象として、頻出する「写真」のモチーフを映画・フェティシズム・死の3点からとらえた論文が刊行予定となっている("Truffaut and the Photographic: Cinema, Fetishism, Death")。また、ドイツの実験的な映像作家ハルーン・ファロッキの作品分析も行い、その成果の一端を講演のかたちで発表した(「ハルーン・ファロッキ、あるいは映像の「読解」――『猶予期間』(Aufschub / Respite, 2007)を見る」)。その他、ジャン=リュック・ゴダールの日本受容についての研究、フランス映画における演技指導の問題など、派生的なテーマについての論文執筆や講演を行い、今後の詳細な作品研究の布石として、『右側に気を付けろ』およびソニマージュ初期作品(『ヒア&ゼア』『パート2』『うまくいってる?』の3作品)のDVD解説原稿の執筆を行った。
3: やや遅れている
(C)現代美術の映像作品における運動と不動に関して、当初は平成24年度にヨーロッパの諸機関の視察を行う予定だったが、残念ながらテーマにそぐう適切な展覧会があまり多く開催されておらず、海外出張を見送った。そのため、文献や映像資料による調査しか行うことができなかった。
平成24年度に行えなかった海外視察を、平成25年度以降に時宜を見て行う予定である。また、本研究全体の重要な参照項のひとつとなっているニューメディア研究の基本図書であるレフ・マノヴィッチ『ニューメディアの言語』の翻訳刊行を平成25年度に予定している。その他については、予定通り研究を進める。
平成25年度には、平成24年度に行えなかった海外視察を行う予定である。また、研究の三本柱のうち(A)不動性をめぐる映像理論小史に重点を置くつもりなので、図書資料の購入に多くの研究費を費やすことを予定している。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
『右側に気をつけろ』Blu-ray DISCリーフレット、紀伊國屋書店
巻: - ページ: 1-18
『ゴダール/ソニマージュ初期作品集』Blu-ray DISCリーフレット、紀伊國屋書店
巻: - ページ: 1-27
Dudley Andrew and Anne Gillain (eds), A Companion to Francois Truffaut, Wiley-Blackwell
巻: - ページ: 137-152
東西学術研究所紀要
巻: 第45輯 ページ: 163-177
Claudia d'Alonzo, Ken Slock, Philippe Dubois (dir.), Cinema, critique des images, Udine: Campanotto
巻: - ページ: 185-192
http://d.hatena.ne.jp/tricheur/