今年度は、(A)不動性をめぐる映像理論小史、(B)不動性の映画史、(C)現代美術の映像作品における運動と不動という本研究の三本柱のそれぞれについて、個別的な研究を積み重ねた。 (A)に関しては、前年度に引き続きアンドレ・バザンの映画批評を取り上げ、「写真映像の存在論」に流れ込んでいる知的系譜をマルローとサルトルに即して分析した発表を行ったほか(「存在論的リアリズムの起源へ――アンドレ・バザン「写真映像の存在論」再読」)、バザンとほぼ同世代の批評家アレクサンドル・アストリュックの「カメラ万年筆」論についても短い記事を執筆した(「アレクサンドル・アストリュック 「カメラ万年筆」の時代の到来を高らかに宣言」)。 (B)に関しては、ロベール・ブレッソンの『白夜』のBlu-rayディスク発売に合わせて長文の解説を執筆したほか、ポレポレ東中野における「ゴダールと政治」特集上映に合わせて『ウイークエンド』『ありきたりの映画』『東風』『ウラジミールとローザ』『万事快調』の各作品の解説を書き下ろし、公表済みの『たのしい知識』、『ブリティッシュ・サウンズ』『プラウダ』、『イタリアにおける闘争』『ジェーンへの手紙』についての作品解説と合わせて映画館で配布した。 (C)については、特に絵画に焦点を当てて映画における運動と静止との関連を探った岡田温司『映画は絵画のように』の書評を執筆した(「エクフラシスの快楽――岡田温司『映画は絵画のように――静止・運動・時間』書評)。
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