研究課題
本研究は「音楽の演奏表現」を題材に、自動処理を利用しつつもデザイン自身が生成物の結果に関与でき、デザイン思考と評価を繰り返するシステムや方法論の構築に取り組む。具体的には音の並びに対して音楽的な構造を把握・構成する「音楽演奏解釈」「演奏意図の伝達・明確化」におけるインタラクションプロセスに着目している。最終年度となる本年度は、人間が、様々な立場においてどれだけその音楽的経験やスキルに依存しているかの考察を行い、以下の2点についての口頭発表を行った。[1] 「聴取を通じた演奏表現の把握と楽譜アノテーション」として、デモ発表を行った。楽器演奏において、用意された楽譜発音における強弱・緩急表現については、フレーズに対する表現内容を、奏者が練習過程を通じて明確に定め、必要に応じて楽譜に書き込み(アノテーション)を行う。ところがそのアノテーション手法は個人差がありて確立されていない。強弱・テンポ表現に焦点を当てた表情付け支援システムを構築する上では、フレーズ範囲の指定とその表現内容を指示するインタフェースデザインが不可欠である。そこで、楽器演奏経験の有無によって (1) 聴取した演奏からどのような強弱・テンポ表現を想起するか、(2) それをどのような形で楽譜に書き表そうとするかについて、参加者を対象とした公開実験を行い、演奏表現の聴取分析について問題意識の共有を図った。[2] ポピュラー音楽の頂点音における 母音の出現頻度に関する分析。これまで、音楽演奏解釈の文脈において、フレーズ上の音楽的な頂点への認知的分析を行ってきたが、歌唱メロディを対象にした考察は行っていなかった。そこで歌唱フレーズの頂点音については、先行研究の頂点推定モデルから抽出される頂点音と,楽曲に対して知覚的に判定される頂点音の二種類のものを対象に分析を行った。
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情報処理学会研究報告 音楽情報科学 Vol. 2016-MUS-110, No. 13
巻: 2016-MUS-110-13 ページ: 1-6